騎士の集い09
「ルーン、そろそろ帰ろう」
コウの声がして、ルーンは飛んで戻ってきた。コウはルーンを連れ、街の外で待っているクリスとナティアに声をかける。クリスはコウに気付き、壁にもたれ掛かっていた体を起こした。
横にいたナティアと共にコウ達と合流すると、再びティレニアへと歩き出した。
その途中……
「ルーン?」
コウは急に立ち止まったルーンに声をかけた。ルーンはしばらく遠くの森を見つめた後、こちらを向く。
「どうかしたのか?」
『東軍が聖域から離れたようです』
ルーンの言葉に、コウはクリスの方を見て「何の事?」と目で訴えた。クリスはしばし考え、たどり着いた答えを放つ。
「そうか、聖域は今大変不安定な状態のはずだ。主が突然居なくなったからな。そういうことだろう?」
クリスの答えに、ルーンはこくりと頷いた。コウやナティアはまだよく判っていない。するとルーンがコウに近づき、目の前に立った。
『(コウ嬢……ではなくて)カイル殿、申し訳ないが、私は一度森へ戻ります』
「? 何かあったのか?」
『森には私の結界が張り巡らされていますが、今はその秩序が崩れて不安定になっています。一度戻って、結界の張りなおしをしたいのですが……』
傍に居ると言ったばかりなのに、離れるなど自分勝手ではないだろうか……。ルーンはそんな風に思っていたが、全くその心配はなかった。
ルーンの躊躇いがちな様子に、コウはふわりと表情を緩ませた。
「そうだったのか……いや、気付かなくて済まない。行っておいで、ルーン」
『カイル殿……』
「心配するな、精霊よ。カイル殿は私がしっかりお守りする!」
『……心配ですね』
「何だと!?」
まぁまぁ、とコウは二人をなだめる。クリスは ふんっと鼻をならしてルーンから顔を背けた。ルーンもまた知らん振りの顔だ。
――まったく。だから、そんなに「守る守る」って言わないでよね。私は一応軍人訓練してるんだってば……。
そんなコウの気持ちに、誰も気付くことは無かった。
←前へ|次へ→
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!