騎士の集い08
ここはティレニア近郊の町、フィナ。ここはいつも通り活気に満ちていた。行き交う人々、商売に長けた威勢のいい男達、子供の笑い声……。
そんな何も変わらない町を見たコウは、先ほどまでの緊張が解けたように感じた。
クリスは格好もそうだが、やはり顔の知れた有名な人物であるため、ナティアと共に街の外にいた。
クリスは直接ティレニアへ戻るつもりだったが、古の精霊・フェザールーンが『久しぶりに街を見たい』と言ったので、少し寄り道することになった。
『町はずいぶん活気付いたものだ……』
「ルーンはどれくらい街に来てないの?」
『直接見たのは、もうずっと……何百年も前のことだが、定期的に街の様子を教えてもらっていたから、それなりにな』
「……誰が――?」
コウは第三者の存在に気付く。ルーンはずっと森に身を隠していたんだから、街の様子がどうだったかとか判るわけ無い。そして、今確かに「教えてもらっていた」とルーンは言った。当然、「誰が?」と聞くだろう。
だが、コウはそう問いながら、無意識に気付いていたかもしれない。古の神に会える者など、一人しか思い浮かばないのだから。
それは……
『緑色の変なヤツにだ。しかもちゃんとコウ嬢を守れていないし、あの役立たずめ』
やっぱり。緑色の変なヤツっていったら、やっぱりあいつよね?
「なんだ、カルロと知り合いだったんだ」
『旧友だ、仲が良いかは触れないでくれ』
「ふーん、仲いいんだ」
『何故そうなる。触れるなと言っているのに……』
コウは声に出して笑った。ルーンは剥れっ顔だったが、コウの笑顔に自然と微笑む。そんなルーンを見て、思い出したようにコウが話した。
「そういえば、古の風の精霊って『古の精霊の中で一番心優しい』んじゃなかったっけ?」
『私が優しくない、と言いたいのか?』
「いやいや! でも、なんかイメージと違うなって……言葉遣いとか?」
コウの素朴且つ当然の疑問に、ルーンは真っ黒な笑みで答える。
『後世に伝説として残すなら、最高に良い印象を与えたいじゃないか』
「……やっぱあの文章は偽りなんですか」
精霊もそんなこと気にするんだな……と思ったコウだった。
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