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騎士の集い04


 ルクードは黙って頷いた。
 護衛は俯くルクードを見ていたが、やがて視線を遠くへ向けた。ゆっくり自分の感じたことを述べる。

「わたくしは、カイル殿に躊躇いが無かった……とは思えません」
 彼女の発した言葉にルクードは思わず顔を上げる。
 護衛はルクードの方に顔を向け柔らかく口元を緩ませた。

「彼が精霊に発した言葉を覚えておいでですか? 彼は精霊に居場所を荒らしてすまなかったと。それは彼が聖域に入ることを躊躇っていたということでしょう。精霊の王ならば精霊に会うのに躊躇う必要などありません。普通なら……」

「──普通の人間なら、自分の力を過信し聖域に入ることも躊躇わない、か。確かにそうだな」

 ルクードは彼女の意見に納得したようだ。彼女もその様子にホッとしている。

「躊躇いが無い者が王なのではない。精霊の事を想い彼らの聖域に入る事を気遣う態度こそ、真の王……」

「だから逆にカイル殿が堂々と見えたのかもしれませんね。従わせようと思っていたらもっと必死な態度が現れますから」

「ふ……そうだな。ヤツが何も恐れていなかったのは何もしようとしていなかったから……初めから精霊を従わせようとも、我らと戦おうとも思っていなかったのかもしれん」

 周りの兵達も彼らの話に聞き入っていた。
 そのうちの何人かは彼らの言っている意味を理解し深く頷いたが、その他の人間は意味が判らず互いの顔を見合っては首を傾げて見せた。

「カイル殿はなかなか面白い考えの持ち主かもしれませんね」

 傍で聞いていた護衛の一人である司祭風の男が、横から話に割って入った。
 ルクードと女性護衛兵も彼の言葉に賛同し、笑みを浮かべた。

「私はカイルという少年に興味を持った。そこでお前達には済まないが今から少々会って来ようと思う」

「……は?」

 4人の護衛達の声が、見事に揃った。



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