騎士の集い03
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聖域を離れた東軍は自国へ帰る為に大陸の北へ向かっていた。
百人ほどの隊だが精鋭部隊のみで構成されているその軍は、進行、対応が普通より遥かに迅速であった。
もしあの場に古の精霊が居らず、クリスとコウだけであったなら……恐らく二人とも無事では済まなかっただろう。
あの場に古の神フェザールーンがいた為に東軍兵は一切手出しをしなかったにすぎない。
いくらコウがセーレンハイルで戦ったとしても無事に森を出ることは不可能だっただろう。
東軍の先頭に立つルクードは、先ほどから何やら考え込んでいた。
近衛の中で唯一女性である者がそれに気付く。
「ルクード様、どうかなさいましたか?」
「……」
ルクードは彼女の方をちらりと見た。その女性護衛兵の腕と足には包帯が巻かれている。
やはり神にやられた傷は簡単には治らんか。ルクードは心中でそう呟いた。
確かに貫通はしたが、それでも普段は回復魔法でどうにかなるはずだ。
だが、未だに傷口は塞がらず血が絶えず流れているので、定期的に包帯を替えなければならない状態だった。
ルクードは護衛から目を反らし暫く考えた後、漸く口を開いた。
「あの少年は一体何者なのか……」
「あの少年というと、アムリアの事ですね? 確か名はカイルでしたか」
「そうだ。私は初めからアレは姫の護衛兵だと思っていた。確かに少々軟弱そうにも見えたが……だがアレをアムリアと思うことは一度も無かった。何故だか判るか?」
ルクードの問いに彼女は少し頭を悩ませた。戸惑いの目を見せる護衛にルクードは返事を待たず答える。
「……アムリアとは本人の意思でなるものでは無い。つまりその能力を望まぬ人間がアムリアになる事もあるのだ。そしてその強大な力を扱いきれない人間は多い。だがカイルはどうだ?」
「あの少年は、カイル殿は充分アムリアの能力を制御していました。それが何か関係が?」
「そこが腑に落ちんと言いたいのだ。あの少年とて自ら望んだわけではないし、むしろ戸惑ったはずだ。自分が精霊の王だと知らされて……」
「カイル殿にその躊躇いが感じ取れなかったと仰りたいんですね?」
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