聖域と罠18
周辺の東国人たちは、ただその様子を呆然と見つめていた。だが、コウの去りゆく後姿に、ルクードは声を放った。
「待て!」
「……?」
コウはピタリと動きを止めた。ルクードは続ける。
「精霊の王アムリアは歳若い女だと聞いている。だが…お前は……いったいどういうことだ! 応えろ!」
クリスはコウの方を向き、「放っておきましょう」といったように首を横に振る。コウは苦い顔をして、振り向いた。ルクードや、周りの護衛たちは全員コウの方に意識を集中させる。
「さあ、調べが足りなかったんじゃないか? 東国も落ちたものだな」
「……!? なっ!!」
ルクードが言い返そうとしたとき、フェザールーンの『風の舞い』によって視界が阻まれ、気付くとそこにコウ達の姿は無かった。
「何だというんだ、あの少年は……」
ルクードはしばらくコウが消えた場所を眺めていた。護衛達も、特に何も言えずにルクードを見つめる。
聖域とされたこの場所は、古の神が不在のため大変空間的に不安定になっていた。ルクードはしばらく何かを考えていたが、やがて頭を横に振り、すぐにいつもの厳しい表情に戻った。
そして兵士達に森を出るように命令すると、護衛を連れて祭壇を後にした。
第3話「聖域と罠」[完]
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