聖域と罠07
===リストの森 最奥===
夜とはうって変わって森は異なる姿を見せる。眠るときはあんなに煩く感じた木々のざわめきは、今は少しも気にならない。
男と、その後ろに身を縮めながら歩くナティアは、古の精霊がいる『聖域』に向かっていた。陰ながら、レンは木の上を伝い彼らに付いて行く。
「姫、精霊の気配は感じ取れますか?」
「いえ、まだ……」
「そうですか」
男は溜息を吐く。ナティアは男がため息をつく度に肩を揺らせて、縮こまる。
「(だって、気配とか言われても判んないよ)」
ナティアは自分が『精霊の王』だと言われ、特別なんだと嬉しくなったが、自分のどの辺が『特別』なのかよく判っていなかった。
しばらく歩くと急に道が開けた場所に出た。そこには小さな泉があり、綺麗な色の花が何種類も咲いている。泉に浮かぶ水練の花が、太陽に照らされキラキラ光っている。その美しい光景に、ナティアは息を呑んだ。
ここが、聖域――。
言葉を無くしていたナティアに向かって、男は嫌味を込めて言う。
「普段は聖域に入ることなど不可能なのだ。だがアムリアが近づくと聖域への道は開かれる。君には感謝しなくてはな」
後は――古の精霊の封印を解き、アムリアに従わせるだけ。だがアムリアなどただの飾り。実際は、我々が精霊を支配するのだからな。
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