聖域と罠06
東の方角から微かな明りが差し込みはじめる。
全てを隠してしまう程の暗闇が、一変して濃い青色へと変化を遂げた。
徐々に町が姿を現し、その光はやがてティレニアの宮殿まで届いた。
夜明けだ。
ここはティレニア最奥、裏門前。
「コウ様、準備はよろしいですか?」
正装に身をまとったクリスがコウへ近寄る。コウは薄い空色のマントを着なおし、腰にセーレン・ハイルを収める。声を掛けてきたクリスの方を向き、「大丈夫です」と応えた。
コウが眠っている間に、マリアが事情を聞き駆けつけてきてくれた。
昨日よりは回復したが、まだ満足に起き上がれないカルロを優しく撫で、コウはマリアに預ける。
「コウ様、お気をつけて……」
「はい。クリスさんも居ますし大丈夫ですよ。カルロを頼みます」
「お任せください、コウ様」
マリアはきちんとコウに頭を下げ、門の奥へ戻っていく。
その後ろ姿を見届けた後、門を背に、コウは歩き出した。
その後を、従うように付いて行くクリス。
門の入り口で立っていた執事のダイスは、深々と頭を下げた。
丘に出ると、心地よい風がコウの髪と体を包んだ。
マントはバタバタと大きく揺れている。
その後方で、クリスは自身の長い髪を片手で抑えながら、吹き付ける風を受けていた。
先行くコウの背中を見つめながら。
二人はいくつかの丘を越え、リストの森を目指した。
←前へ|次へ→
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!