聖域と罠04
===ティレニア最奥 宮殿内===
「コウ様、どうぞ」
「あ、ありがとう」
ダイスに暖かい紅茶を勧められ、コウは冷えた体を暖めようと紅茶を手に取り、気分を落ち着かせた。それを見て安心したダイスは、今度は窓際で外を眺めているクリスに近づく。
それに気付いたクリスは一度執事を見たが、またすぐに視線を窓の外へと戻した。そして、重くその口を開く。
「東国が動き始めた」
「! 確かでございますか」
「ああ、恐らくな。目立った行動は無いが」
途端にダイスは険しい顔をする。歳の所為もあってか威圧感が感じられた。
「そうですか。では彼らもそろそろ動き出しているのでは」
「まぁあの御方の事だ、こちらに向かっているかもしれん」
コウはクリスとダイスの会話を虚ろに聞きながら、紅茶を飲み干す。ふうっと湯気混じりの白い息を吐き、ソファに深くもたれ掛かった。
銀の装飾がなされた家具が部屋中に見受けられる。明りは数本の大きなキャンドルだけで、それが落ち着いた雰囲気を出していた。傍には未だ眠り続けているカルロの姿がある。
私は柔らかなソファに身を任せ、そっとカルロを撫でた後、静かに瞳を閉じた。
←前へ|次へ→
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!