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第3話:聖域と罠


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コウは未だに意識が戻らないカルロを抱えていた。

傷は癒えたが、息をするのもやっとのようだ。恐らく傷を治すのに相当の力を使ったからだろう。

ナティアと男は、この森の奥深くに眠る古の風の精霊・フェザールーンのもとへ向かった。

精霊のことを思えば、コウは彼ら自身が封印を解きたくないならそれでもいいと思っていた。

とにかく一度会って話がしたかっただけなのに……。

「それがこんな事になるなんて」


 第3話 聖域と罠


コウは自分の思慮の無さを悔いた。
これからどうすればいいのだろう。辺りはすっかり暗くなっていて、来た道を戻ることも出来ない。

古の精霊に会えばなんとかなるだろうが、カルロの力を借りないとどうにもならない。

それに、この森には東国の男とナティアがいる。精霊がすんなり出てくるとは思えない。

コウはカルロの体を撫でながら、悶々と考え込んでいた。

──ザワリ。

「……!?」

今まで静まり返っていた森が、一斉に音を鳴らした。それは非常に小さな変化だったが、コウは確かに森の異変を感じた。

夜の動物達が少し騒がしくなり、やがて息を潜めて何かから隠れようとしている。

恐らく異界の者が、つまりは人間が森に侵入したのだろう。

そう察し、自分も周囲を警戒する。

辺りは暗闇で、月のみが森を照らしていた。木々の陰になり自分すら見えない状況で、侵入した人物が敵か見方か判断するのも難儀だ。

しかしそれは相手も同じ事だった。

「誰だ!」

コウの姿を捉えたのか、侵入者は力強い声で問う。

その声にコウも驚き足を震わせるが、叩き出された声を聞き不思議な感覚がした。

その声の主を知っている気がした。



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あきゅろす。
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