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第1話:死神


 この世に生まれ落ちた瞬間から既に俺の将来は決まっていた。

 帝国に仕える父と、最高司祭であった母。物心つかぬ頃から、帝国の為に生きろと言われてきた。

 自分の事を自分で決められないのは不便だったが、今となってはこの人生も悪くないと感じている。


 第1話 死神


「リセイ、どうかしたのか?」

 隣で本を読んでいたアモンが、心配そうにリセイを見ている。

「いや、なんでもない。今夜は冷えるな」

「……ああ、夜の森は冷え込むからな」

 リセイとアモンは護衛を何人か連れてティレニアへ行く途中だった。
 ティレニアへ行くには海を渡らなければならないし、1日2日で行けるような距離ではない。当然精鋭部隊なので、普通の人よりは進行は早いが。

 今居る場所は、帝国の最南端に広がる、深い深い森だ。

 日も暮れ、今日の野宿の場所は確保した所だった。

「……!」

 リセイは何かの気配を強く感じ取る。

 傍に居たアモンも彼の様子に気付くが、辺りを見回してみても特に変わった所は無かった。

「リセイ、どうかしたのか?」

「来たか」

 アモンは、「え?」と聞き返すが、その返事は返ってこず、リセイはいつもに増して険しい顔をして黙り込んでいた。

 サッと立ち上がったリセイを見上げる。
 するとリセイは何も言わずに森の暗がりに入っていった。

「おーい、リセイ?」

 意味の分からないまま置き去りにされたアモンは、どうすることも出来ず、ただリセイが消えた方向を見ていた。

 一方、さっさと森の奥へ入ってしまったリセイは、夜空が良く見える場所にいた。
 彼は澄んだ空を見上げ、一層難しい顔をしている。
 辺りには何も無い。ただ樹と草のみ。
 だが、確かにリセイは異変に気づいていた。

 それが例え、何千キロも離れた場所であったとしても。

「東国の死神が……」

 リセイは空に向けて剣を突き刺し、何かを唱えた。
 すると上空の空気が振動し、森の生き物が一斉にざわめき立った。
 鈍い音が響き渡り、辺りの空間が捻じ曲げられる。

 ――コウ。

 その瞬間、爆風とともにリセイの姿は消えてしまった。

 後に残るは先ほどと変わらぬ静かな木々達のみ。

 リセイの様子を不審に思った家臣が追いかけてきた時には既に主人の姿はない。

 その事をアモンに報告すると、彼は不敵な笑みを浮かべてこう言った。

「放っときなよ、どうせ今更追いつけないし」

「しかしアモン様!」

「大丈夫、これはリセイの十八番だから」

 突然人が消えたというのに、何一つ動揺を見せないアモン。家臣はその態度がどうしても理解できなかった。

 そんな時、後ろから兵隊長が説明を加える。

「余計な詮索はするなといつも言っているだろう。リセイ様は闇の支配者であるのだぞ、忘れたのか」

「はっ、しかし……」

「ふっ……お前はまだ入隊して2年だったな。知らぬが当然か」

 隊長は意味ありげな言葉を放つ。やはり理解不能な若い家臣。

 だが一先ずここは無理やりに自分を納得させ、主が帰ってくるのを待っていた。


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あきゅろす。
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