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第3話:10


 コウが青空に向かって雄叫びを上げている頃、銀色の精霊はフラフラと空中を彷徨っていた。

「やっぱりアムリアなんか弱くて馬鹿で阿呆だ。アモン早く帰ってこないかなー」

 彼の名はシルバーレイ。見た目そのままの種族、銀の精霊である。
 ご覧の通り気難しい性格で、生涯で契約している人間はアモンただ一人しかいなかった。

 彼は戦闘時には銀の剣に変化してアモンと共に戦う。長年アモンとだけいるせいか彼以外の人間を信じられなくなっていた。

 それなのに最近調子がおかしい。何がとは明確に言えないが、アモンが暫くティレニアを出ると言った時当然付いていくはずだった。
 だが体が言う事を聞いてくれなかった。

 と言うよりは、彼の中の何かが「離れてはならない」と言っている。離れたくない、傍にいたいと。

 そんな様子を見てか、アモンは結局彼を置いて行ったのだ。
 本能には逆らえないんだね、と笑って。

 何のことを言っているのか、それは直ぐに分かった。

 最近になって、弱いヤツも強いヤツも、精霊は皆どこか騒がしい。その原因は当然『アムリア』の出現だった。

 今更、もう何百年も現れなかった精霊の王などにはさして興味はない。が、あまりに精霊が騒ぐので、残りわずかな興味心で見に行ってみたのだ。

「たいしたことなかったな」

 そこらの見習い戦士の方がよっぽど強そうだった。自分より弱いヤツを精霊の王だなんて、認められる訳がない。

 彼はその他と比べて自我の強い精霊だった。

「ん? アモンの部屋に人がいる……」

 アモンはまだ帝国から帰ってきてないはずだった。それが、彼の部屋から人の気配がするなどと……あの用心深いアモンが勝手に人を部屋にいれるとも思えない。

 只ならぬ何かを感じた精霊は、部屋へ近寄って様子を見に行った。

「? 何だあいつら」

 見慣れない格好をしている男が二人、何やら行動が怪しい。

「おい、これがヤツの宝剣だ。こいつを燃やせば……」

 そう言いながら男共が手にとる剣。それはアモンの専用武器でもあった。
 通称レイ。
 そう、この銀の精霊シルバーレイの一部であった。

 銀の精霊はアモンの宝剣に定着している。剣が燃えれば当然精霊の力はなくなる。そうなれば……精霊の死。

「やめろーっ!」

 シルバーレイは必死で止めにはいった。だが人間には姿が見えないのでどうすることも出来ない。

「燃やせ! 先に壊してもいい! とにかくヤツの力を削ぐんだ!」

「させるかぁぁっ!」

 男達は長い呪文を並べ炎を起こした。それは小さな火から大きな炎へと膨らんでいく。

 銀の精霊は宝剣に戻り必死の思いで剣を光らせ、皆に異常を知らせようとした。

 今は契約者が傍にいない。そのため本来の力の数十分の一しか出せなかった。そしてそれは全く抵抗力を持たない。

「おいっ! まさか精霊か!?」

「かまわねぇ! 精霊ごと壊してしまえばいい!」

 男らは更に火の勢いを強めた。銀は炎に弱い。
 シルバーレイの力は段々と衰えていった。

「くそぉぉ、アモン……」

 何も出来ない自分が悔しい。アモンが留守の時を狙ってよからぬ輩が襲ってくるなど十分に考えられる事だった。



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あきゅろす。
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