第3話:9
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初試験から数日が経とうとしていた。
ここ最近は毎日サラに引っ張りまわされ、やれ勉強だやれ修行だと体が悲鳴を上げている。
それでも眠っている間だけは私の自由。
朝になっても起きたくない原因は以上に述べたとおり明白で、起きなければ三倍になって怒られる。
よし、どうせ怒られるなら軽い方がマシだ、と目も開かない内に体を起こそうとした。
「ん……? 苦し……」
おや、今日はやけに体が重い。
病気ならサラの特訓を免れられるかとも思ったが、そういう次元の話ではない程寝心地が悪かった。
事実確認の為、うっすら目を開ける。
「……?」
目の前にいるのは何?
小さな竜みたいな、ぬいぐるみみたいな、ペンギンみたいな、何だか分からない生き物が腹の上に堂々と乗り掛かっていた。
銀色の鱗を身に纏い、空色の目がこちらをじっと見つめている。
「……よっわ、あんた本当に王?」
「王って……ああ、精霊王っかって事? そうみたいよ。貴方は……精霊?」
「はぁ? 当然だろ! 何バカ面しておかしなこと言ってんだ」
なんて言葉遣いのなっていない無礼ものなのだろうか。怒りの鉄拳が今にも振り下ろされようとしていた。
「で、君は何の精霊?」
「んなもん気づけよ、王なら」
「だって分からないもの。教えてよ」
「……けっ!」
何こいつ! と怒って体を起こすが、銀色の精霊はさっさと窓際まで飛んでいってしまった。空飛ぶペンギンなんか初めて見た。
「じゃーな」
「ちょっと待ちなさ……」
話の途中で銀色の精霊は消えてしまった。銀色の羽、蒼の瞳、何処を見ても本当に綺麗な精霊だった。だったけど……。
「何よあいつ! 名前くらい名乗りなさいよね!」
性格は最悪だった。
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