第3話:2
朝食後は当ても無く彷徨っい歩いていた。
すれ違う人々は皆自信に満ち溢れ、どこからそんな力が湧くのか不思議でならない。
彼らはこの恐さや辛さを乗り越えてきたのだろうか。だとすれば私は大きな勘違いをしていたことになる。
軍事機関に入れば簡単に職に就けると思ってい私は何て目出度いんだろう。
私以外の生徒は既にある程度の教育を受けており、修行の為にだけにこの機関に来ていた。
そんな中、一度も戦闘経験のない人間が頑張ったところで彼らの様になれるわけがない。
などと言い訳がましいものを頭の中で巡らせ、気付くと中庭まで来ていた。
とりあえず人を避ける様に中庭の一角にある木々に覆われている場所へと入った。
木の間をくぐり奥へ入ると一つだけ古びたベンチがあり、そこに腰掛けて深いため息を吐く。
「……落ち着く」
私は呆然とただ木々の揺らぐ音を聞いていた。何も考えられない、むしろ考えたくない。
目は閉じたまま風の音を聞いて、肌に当たる日の光を感じる。
ここでは何も出来ないかもしれない。でも、私はここにいる。逃げてばかりではいられない。
そっと目を開け、目の前に立ち並ぶ木々を見つめた。大きくて堂々とした姿に見惚れ、思わず呟く。
「立派な樹……一つ一つ皆必死で生きているのよね」
勝手に樹に励まされた気分だった。少し気力を取り戻し、立ち上がる。
前へ歩こうとした時今まで何もなかった大樹の枝の辺りが微かに動いた。
ただの鳥だろうと思い気にせず近寄れば、そこには。
「きみ、なに?」
その枝にちょこんと座っていたのは、熊だか何だか分からない生き物だった。
思わず「なに?」と聞いてしまったが、動物に話しても仕方ないだろう。
だが、言わずにいれなかった。
「誰なの……?」
もう一度聞くと、その生き物はこちらを向いて首を傾げてみせた。
「なんか、かわいい」
気落ちした私にとって、かわいいぬいぐるみみの様なそれは癒しになった。
「……おいでよ」
そいつは少し挙動不審になったが、ポテッと地面に降り立った。着地は満点だ。
彼はゆっくり顔をあげ、私の目を真っ直ぐ見つめた。そっと手を差し伸べると、彼は素直に私の方へ来た。
そして抱き上げる。
「わぁっ軽い! おまえ何で出来てるのー?」
そうやって話しかけても返事が来ない事はわかっているけれど、それでも心は少し救われていた。
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