閑話4
リセイの旅立ち宣言に、さすがのグレイも黙っちゃいない。
「何を言ってるんですかリセイ様! なりません!」
血相を変えて怒るグレイをなだめる様に、リセイは優しく返す。
「グレイ……私の留守の間、ここを頼む」
「私は嫌だと言ってるんです!!いくらあなたの命令でも、それは出来ません!」
頑として譲らないグレイの様子に、リセイもため息を漏らす…。
「コウは世界でただ一人のアムリアだ。我々も守る義務がある。現に今、東の方で不穏な動きが目立つ…取り返しのつかない事になる前に、手を打っておく必要があるんだ」
黙り込むグレイかにリセイは更に言う。
「私とて愚かではない……例えアムリアが希少種だとしても、私は命まで掛けたりはしない。私の一番大切なものは、この国だからな……安心しろ」
帝国をないがしろにするわけではない、というリセイの発言にようやく納得し、グレイは仕方なく承諾したようだ。
「……わかりました。出発の準備はお任せください」
「すまないな、グレイ」
「もったいないお言葉です、リセイ様…では失礼します」
そう言って彼は出て行った。
「大変だな、おまえも…」
端で聞いていたアモンは苦笑する。
「仕方がない、優秀な部下を失いたくはないからな」
リセイの少し緩んだ表情に、アモンは何も言えなかった。
部下に対してこれほど慎重になるのは、彼の育った環境のせいかもしれない。だがこの人に対しても物事に対しても真面目な性格が、周りからの彼の評価を上げていることは間違いないだろう。
辛い過去とは時に人を強くする。
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