長編メイン小説【もっとX2強くなれ!!】 その68 しかし、そこは腐っても担任教諭。 教育者の誇りと、27年に及ぶ人生経験をフル回転させた山岡は、何とか復活した。 「……じゃあ相沢君、行きましょうか…?」 「あ。…先生? 先に医務室に行ってからでも…良いですか…?」 勇輝が、遠慮気味にそう尋ねると山岡は、 「勿論ですよ♪ …じゃあ、先に生徒指導室で待っています」 と言って、手をヒラヒラ振りながら教室を後にした……。 「じゃあ、僕も医務室に行ってくるよ」 山岡が教室から出て行き、勇輝が二人にそう告げると、二人は少し怒った様な表情を作った。 「勇輝ちゃん……いっつも言うとるやろ……!?」 「……一人で行動しちゃダメだよ…!!」 「う……だって…。 右手の怪我も…もう大丈夫な訳…だし…」 「「…はぁ!?」」 勇輝は、なるべく二人を刺激しない様に、言ったつもりだったのだが、先日の事件が教訓になったのか、あれ以来、皆は勇輝の行動に対し、かなり厳しくなっていた。 勇輝に睨みを効かせた二人は、こう思う。 『…ったく…勇輝ちゃんにも、困ったモンやのぅ。 ちぃと目を離した隙に、あっちフラフラ、こっちフラフラ……。 …全く、我ながら厄介な子に惚れてもうたモンやの…』 『全く!!…勇ちゃんったら、あんな事があったのに無警戒にも程があるよ!! ……あ〜あ、本当なら今日は、勇ちゃんが僕の部屋に来てくれるハズだったのに……こっそりお酒も用意してたのに…。 ……つまんないの……』 特に、佐々木の変貌振りは凄まじい。 元来、佐々木は恋愛沙汰には淡白な方なのだが、どうやら先の事件や、高宮達の積極的な様子に触発された様で、 『僕も皆みたいに、もっと積極的にアプローチしないと、勇ちゃんが取られちゃう…!! ……そんなのヤだ!!!!』 と考えを改めた様だ。 普段遊び慣れていない人間程、想い詰めると恐い者は居ない。 ひょっとしたら現在、勇輝に惚れている者達の中で、最も危険人物なのは、佐々木なのかも知れない。 その証拠に、いつの間にか佐々木は勇輝の左手をガッチリ握り締めていた。 ――かなり重症である。 今後、佐々木が拉致監禁等の犯罪行為に、手を染めない事を祈るのみである。 [*前へ][次へ#] [戻る] |