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長編メイン小説【もっとX2強くなれ!!】
その25

おずおずと、勇輝の周りから離れて行く男達を尻目に、高宮は虚ろな表情の勇輝を凝視した。

『ちょ、ちょっと待て!!
これが、あのオタクのコゾーか!?
一体どーゆー事だ…!?』

突然目の前に現れた勇輝の素顔に、内心動揺した高宮だったが、その場はなんとか取り繕い、ジャケットを脱ぐと横たわる勇輝に被せた。

「おい…お前等に言っておくが、今輪際コイツに手を出す事は、この俺が許さねぇ…分かったか…?」


「………はい」

渋々頷く藤崎だったが心中、全くと言っていい程納得していなかった。

そして、呆然とする親衛隊の者達や、運動部の男達を一瞥した高宮は「フン…」と鼻を鳴らし、勇輝を抱えると学生寮へと去って行った。


去り行く高宮の姿を見つめながら、藤崎は思う…


『薫様や州慈様だけならまだしも、まさか司様まで惑わされてしまったんじゃ……。
こうしてはいられない…早く手を打たないと、今までの学院の秩序が、相沢勇輝のせいで…壊されてしまう…!!』

高宮個人の事も勿論だが、藤崎が本当に心配していたのは、小等部から続く高宮 司の影響力の低下であった。

高宮にもし特定の相手が出来れば、高宮の院内における人気ランキングも下がるかも知れない。

それは取りも直さず、高宮の親衛隊長である藤崎の、権力の失墜を意味していた。

そして、その事を心配していたのは藤崎だけでは無く、各親衛隊の者達もそれぞれ、同じ事を危惧していた。


藤崎の考える鹿鳴館学院の秩序とは、

「生徒会と親衛隊だけが、院内の権力を牛耳っていれば良いんだ…」

といった、酷く偏狭なものだったが、長くこの学院で生活している者達(教師も含め)に取っては、最早当たり前の事になっていた。


勇輝の叔父であり、学院理事長である相沢 征二は、実を言うと、この様な不自然な秩序を破壊する為、勇輝の転入を兄、誠一郎に頼み込んだのである。

そう言った意味では、現在の所、征二の思惑通り事が進んでいると言っても過言では無い…。

では何故、征二は勇輝の転入初日に「変装がバレたら御仕置き」等と、計画の妨げにしかならない約束事を取り付けたのだろうか……?


答えは、只の趣味である。


鹿鳴館学院の理事長は、それなりに大きな志を持った人物だが……

……同時に、甥っ子に首ったけなのだ。


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あきゅろす。
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