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長編メイン小説【もっとX2強くなれ!!】
その19〜大愚を選ぶ悦び〜

―――――――――。

体育館から、人目に付かない様忍び出た能美は、一路医療棟を目指して移動を開始していた。

『全く…こういう時は、この学院の無駄に広い敷地面積を、呪いたくなりますね……』

そう呟きながら、能美が体育館から少し離れた噴水の横を駆けていると、離れた場所から野卑な声が聞こえて来た。

「おい…!!いた!!能美だ能美!!」

「オタクがいねーぞ!!」

「構う事は無ぇよ!!能美だけでも捕まえようぜ!!」

自分目掛けて駆け寄って来る、六人程の男達を見据えて能美は思った。

『勇輝君も見ていない事ですし…彼等には、本物の喧嘩を体験して貰いましょうか…』

能美は先程、勇輝の部屋から脱出した時と同じ様に、中指の第二間接だけを出っ張らせた、奇妙な形の拳を作ると、一番最初に駆け寄って来た男の目に、拳の鋭角な部分を突き立てた。


―――グサ…!!


「ぎゃっっ!!!!」

先程の勇輝の部屋の時より、容赦無く深く突き刺さった拳に、男がうめき声を上げその場に膝を付いたが、能美は一切構わず、男のこめかみを革靴の踵で踏み付けた。

―――ゴキ…!!!!

そして能美は、冷酷な表情で、目から血を流し気絶した男を一瞥すると、数を増やしつつ、駆け寄って来る男達の群れを見た。

『神州連合時代の私なら、こんな不利な状況で戦う何て…考えられませんね……』

能美がそう思い、愚かな自分を嘲笑っていると、男達は能美を取り囲む様な形で、ジリジリと近付いて来た。

『しかし、誰かの為にムキになるというのも、悪く無いですね……。
今なら暴力に対する妙な虚しさを感じません。
……寧ろ、体の底から力が湧いて来ますよ…。
フフ…【銀髪夜叉】が熱くなるなんて…。
…ここは一つ、忠臣や硫介君達の様に、馬鹿になってみますか……』

能美が、嬉しそうに口角の端を吊り上げ微笑んでいると、男達はすっかり能美の周りを取り囲み終えていた。

「おい…!!能美!!テメー何ニヤけてんだよ!!
俺達のバックには生徒会長の親衛隊が付いてんだぞ!!」

「生徒会役員の肩書きは通用しねーぞ!!」

「大人しく敗けを認めて、オタクを連れて来いよ…!!」

騒ぎ立てながら、白旗を掲げるよう勧める男達。

しかし、能美は美しい切長の瞳を見開き…こう告げた。

「テメーら……一人じゃ喧嘩も出来ねぇクソ共が…下らねぇ能書きタレてんじゃねーぞっ!!
俺ぁもう熱くなってんだよ!!」

そして能美は言葉を切り、先程倒した男の後頭部を、まるで仁王がする様に、力強く踏み付けると、言葉を続けた。

「元、神州連合副長…銀髪夜叉の能美だ!!
ダセェ目に遭いてぇ奴から、掛って来んかい!!」


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