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長編メイン小説【もっとX2強くなれ!!】
その18


―――ガラララ。


勇輝を抱えた能美は、体育館の扉を開くと、ステージの脇にある倉庫への階段を、一歩づつ慎重に降り始めた。


「…州慈さん…ごめんなさい……僕…足手まとい…ですよね………」


熱で、頬が朱に染まってしまった勇輝が、能美にそう告げたが、勇輝の申し訳無さそうな表情とは対照的に、能美の表情は微かに嬉しそうに見える。


「別に、勇輝君が気に病む様な事は何もありませんよ……」


そう言って、勇輝に微笑みを送った能美は、内心こう思っていた。

『こんな危機的状況にも関わらず、勇輝君に頼られている事に喜びを感じる何て…私もかなり不謹慎ですね……。
熱を出した勇輝君を、お姫様だっこしました…何て忠臣に伝えたら……。
フフ…きっと私は殴られてしまうのでしょうね…』

能美は階段の突き当たりのドアを開くと、倉庫の隅へ体育用のマットを広げ、そこへ勇輝を寝かせた。


「いいですか?もし私以外の誰かが、階段を降りて来る気配を感じたら、そこの小さな窓から脱出して、何処かに身を隠していて下さい…」


能美はそう言うと、足下に設置された高さ30p程の、明かり取り用の小さな窓を指差した。

「………は、い…」

先程より熱が酷くなってきたのか、勇輝はかなりツラそうな表情だ。


「勇輝君なら、その窓のサイズでも苦になら無いでしょうが、私達を追っている者達には狭い筈です…恐らく少しは時間が稼げるでしょう……。
そして、すぐに携帯電話で私に連絡して下さい…」


能美は、横になった勇輝に自分の上着を掛けてやると、勇輝の頭を優しく撫でた。

「…分かりました…。
州慈…さん…気を付けて…」


『弱いかと思えば強い。
強いかと思えば弱い…。
不思議な子ですね…勇輝君は……。
忠臣や硫介君達の気持ちが良く分かります…』


「大丈夫ですよ…」


そう言うと能美は、勇輝の額に軽く口付け、力無く頷く勇輝を残し倉庫を後にした。


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