長編メイン小説【もっとX2強くなれ!!】
その16〜勇輝の強がり〜
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何とか寮の部屋から脱出した二人は、体育館の裏まで移動する事に成功していた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
顔を真っ赤にし、地面に座り込んで呼吸を整える勇輝。
すると、眉間に軽く皺を寄せた能美が、語り掛けて来た。
「勇輝君…右手を見せて下さい…」
「あ。……だ、大丈夫ですよ…!!」
勇輝は包帯の巻かれた右手を、背中へ回して能美の視線から隠し、にっこり微笑んだ。
そんな勇輝の反応に、能美は少し困った様な顔で、
「駄目です…君の『大丈夫』は当てになりませんから…」
と、言うと「さぁ見せてごらん?」と言わんばかりに、手の平を差し出してきた。
ついに観念した勇輝は、能美が差し出した手の平に、包帯の巻かれた自分の右手を重ね合わせる。
どうやら先刻の乱闘の際、勇輝は負傷した右拳を使用してしまった様で、傷口からは出血が始まっており、包帯には血が色濃く滲んでいた。
「…やはり勇輝君の『大丈夫』は当てになりませんね…。
…何が大丈夫なものですか…」
「…ごめんなさい」
能美の手の平に自分の手を重ねたまま、勇輝が申し訳無さそうに謝まると能美は、フワリと微笑み勇輝の右手を優しく撫でながら語り掛けた。
「勇輝君が謝る事ではありませんよ……。
守りきれなかった私の責任です…」
そう言いながら、少し悔しそうな表情を見せる能美。
「…しかし…出血が始まったという事は、塞がり欠けていた傷口が開いたという事です…」
能美にそう言われた勇輝は、少しだけ不安そうな表情で、自分の右手を見つめた。
「本来ならば傷口を消毒して、包帯を新しい物に代えなければならないのですが……。
私達が医務室まで行くのを、黙って見逃してくれる様な連中では無いですし…………勇輝君…?」
そこまで言った能美が、勇輝の異変に気付き、自分の手の平を勇輝の額に当てた。
「僕なら、大丈夫ですよ…州慈さん…」
「勇輝君、強がりにも程があります…熱があるじゃないですか……」
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