長編メイン小説【もっとX2強くなれ!!】
その8〜理由〜
苦笑いする能美を見つめながら、勇輝は思う。
『うぅ…州慈さんの事だから…
「何で、わざわざ通っている学校を、皆に教えて上げないといけないのですか…?」
……とか言いそう…。
…もし、そんな薄情な事を言われたら…僕、州慈さんの事嫌いになっちゃうかも……』
いくら後々親しくなったとは言え、勇輝の中では神州連合との抗争の折、自分を拉致した時の冷酷な能美の姿が、色濃く陰を落としていたのだ。
しかし、勇輝の想像は大きく外れた。
能美はいつもの冷たい美貌を崩し、暖かく微笑むと勇輝に語り掛けた。
「勇輝君……族の世界は君が考えている程、純粋で美しい世界ではありません………。
チームを大きくしようとすれば、時には卑劣な手段を必要とします…」
それを聞いた勇輝は、かつての城原や、冷酷な計画を淡々と告げる能美の姿を思い出した。
「………………」
強張った勇輝の表情から、その思考を読み取った能美は、言葉を続けた。
「必要があれば、犬畜生に劣る様な行為にも、手を染めます……。
そして、そんな行為を続けて居れば、当然複数の人間から恨みを買ってしまいますね?
……だから…「身元を隠す必要があったんですか……?」
今にも泣き出しそうな表情で、能美の言葉を先取りした勇輝は、ソファーから立ち上がり能美の隣まで行くと、両手で能美の頭をフワリと、優しく抱き締めた。
「…バカ…。
何でそんなに、おっきくなる事ばっかり考えてたの…州慈さんだってツラいクセに……」
勇輝の瞳から流れ落ちた涙の雫が、能美の頬にポタリポタリと滴った。
「…忠臣が…親友が、それを望んだから…」
「…バカ…忠臣さんも、州慈さんも…バカだよ…。
ホントは、嫌で嫌で仕方無いクセに………。
自分で自分を苦しめて……バカ……」
勇輝の、涙を伴った優しい言葉を聞いた能美は、薄く微笑むと、こう告げた。
「でも、そんな馬鹿な私達を救ってくれたのは勇輝君ですよ……。
君が入ったチームが、二代目夜行會で…本当に良かった……。
……ずっと変わらず、天使の様な君のままで居て下さい……」
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