長編メイン小説【もっとX2強くなれ!!】
その32
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会社に、警察から連絡があった時は、受話器を持つ手の震えが止まらなかった。
……自殺未遂。
不覚にも一瞬、呼吸の仕方を忘れてしまった。
病院で、医師から怪我の具合いについて、頭部の打撲だけだと聞いて、漸くひと心地着く。
何でもプラットホームに転落した際、頭部をレールに打ち付けたものの、電車は来て居らず、大事には至らなかったという。
今、本人は鎮痛剤を飲み、病室で眠っているらしい。
しかし、それならば本人の不注意に因る、転落事故の筈だ…………。
何故、警察は自殺未遂の恐れがある等と、私に伝えたのだろう?
暫くの沈黙の後、医師は口を開いた……。
「これは大変申し上げにくいのですが……。
相沢 勇輝君の身体には、過度の性的暴行を受けた形跡が、認められます…」
『か、過度の…性的暴行…だと…ば、馬鹿な…』
勇輝の怪我が軽傷だと聞いて、安堵したのも束の間だった…………。
目の前で淡々と喋り続ける医師と、その周囲の風景が歪んで見える。
『う、嘘だ…嘘だと言え……お願いだから…』
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『家出位で、大袈裟に騒いではいけない。
思春期の子供にありがちな現実逃避だ……。
二、三日も経てば帰って来る……』
そう、高をくくって居た。
その結果…勇輝は…私の愛する息子は、一生取り返しの付かない、大きな傷を負ってしまった…。
…私は大馬鹿者だ…。
「……ので、事故では無く故意に、線路に飛込んだ可能性が有ります……。
………相沢さん?
…顔色が悪い様ですが、大丈夫ですか…?」
「あ、あぁ…大丈夫です。
続けて…下さい…」
ハンカチで、額の汗を拭う私に、医師は平然とした口調で言葉を紡いだ。
「ショックなのは、良く分かりますが、貴方の息子さんは今、貴方以上に傷付いています。
………どうか冷静に…」
「…申し訳無い……」
医師という立場上、こういったケースにも、慣れているのだろうか……。
茫然自失としていた私を、この医師は上手く、現実に引き戻してくれた。
「……病院内に於ては、勇輝君の病室には注意して居るのですが、看護婦に依る監視だけでは、十分とは言えません………。
検査等で、三日程入院の必要が有ります。
その間、どなたか家族の方に、付き添いをお願いしたいのですが……。
御都合の方は、如何でしょうか?」
私の答えは決まっている。
「問題ありません。
私と、勇輝の弟が交替で付き添いますから」
もう絶対に、勇輝を一人きりには、させない……。
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