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この場所に居るべき人は、


「いってらっしゃい。」

キャス:「いい子にしてろよカンナ!!」

「残念ながら私はいつもいい子ですよ、キャスと違って。」

キャス:「あ、酷い。」


心地良い風が吹き渡る海岸
今回ログが指したのは、ここ春島

そして私は留守を任されている
ペンギンと一緒だから、退屈もしないだろう
あ、ちなみにキャプテンも部屋にいるんだったっけ


「ねぇペンギン、何故キャスは買出しなのに楽しそうなの?」

ペン:「まぁ………買出しという名の”ナンパ”だからな。」

「………なるほど。」


それならあのテンションの高さも納得だ
夜の為の下見、ということですね
いつ降りれるかわからない陸に着いた日くらい、浮かれてしまうのは人の性
逆に彼くらいわかりやすい方が単純でいいかもしれない

街へと消えていく背中を笑顔で見送り、私も自分の仕事を全うすることにした
さて……掃除と洗濯、頑張ります!

















「いってらっしゃい。」


太陽が落ち、月が現れる時間
夜空に星が煌く闇の時間

私は昼と同じ言葉を口にしていた


ロー:「見張りはベポに頼んである。大人しくしてろよ?」

「キャプテン、私はいつも大人しいですよ?」

キャス:「あれ、何。これデジャヴ?」


キャスも私と同じ事思ってたみたいだ
確かに昼にした会話と酷似している、内容は違うけれど
私はそんなに問題児だろうか?聞き分けのいい良い子を目指しているんだけれど

今宵は船員が楽しみにしている陸でお酒の飲める日だ
楽しくお酒を飲んで、楽しくお姉さん達と話をする憩いの時間なのだ
女である私が付いて行っても邪魔なだけだし、何より行っても仕方ない
どうせならお姉さんよりもお兄さんと飲みたいしね


「ゆっくりしてきて下さい。一晩くらい私とベポで船を守れますから!」

キャス:「………お前は良い子だな、おれ感動して泣きそうだ!」

「泣かないで、面倒だから。」

キャス:「………。」

「嘘だよキャス、くついできて下さい。」


お姉さん達とゆっくり出来るのがそんなに嬉しかったのか
今まで見張りで船番をしてたこともあるんだろう
その時と比べれば、女性のクルーが入ってきて少しは役に立てた気がした

本当に楽しんで来て欲しいものだ


ロー:「……行ってくる。」

「はい、いってらっしゃい。」


夜の街に向かって行く一同を見送り、姿が見えなくなるまで手を振る
私もお酒を飲みたい気分ではあるけれど、皆が居ない今日は我慢だ
もし敵襲があった時に酔っ払いじゃ私のプライドが許さない
それに飲むならお兄さんと飲みたい(しつこい)

ベポが見張りをしてくれているらしいけれど、続ければ気が滅入るだろう
休んでもらおうと思い見張り台へ足を向ける
ベポも本当はみんなとご飯を食べに行きたかったに違いないのだ


「ベポ、交代しよ?ずっとじゃ疲れちゃう。」

ベポ:「あ、カンナ!おれ大丈夫だよ!!夕方から寝させてもらってたから!」

「でも……。」

「カンナこそ昼間に洗濯と掃除してくれてたんだから、ゆっくり休んでよ。」

「……ありがとう。じゃあ夜食だけ持ってくるね!」


助かるなぁ〜、と言ってくれたベポに微笑みかけキッチンへと向かう
既にコックさんが用意してくれている夜食を取りに行く為だ
ベポはよく食べるから量も沢山あるのだけれど

よく食べる子はよく育つからいい!(寧ろベポなら何でもOK)

夜食を届けた後は厚意に甘え、部屋で物理学の本を読む
昼間買い物(ナンパ)に行っていたキャスが、わざわざ本屋さんで買ってきてくれたのだ
欲しいと思っていたし、勉強すればするほど時空間を操る力を有意義に使えるようになる
時計の針が夜中の1時を回った頃、瞼が重くなり本を閉じた


「………寝よう。」


まどろむ意識の中で、ふと船外へと視線を向ける
月夜に照らされる海岸には一つの影も見えない

今頃皆は楽しく騒いでいる頃だろう
笑顔溢れる状況を頭に思い描けば、それだけで私も嬉しくなる
やはり自分の大好きな人達が楽しければ、それだけで幸せな気分になれるのだ

小さく微笑みながら大きなベッドに横たわる
そう言えば……この船に乗ってから一人で寝るのは初めてかもしれない
こんなに広いものだったんだと再認識した


掛け布団を目元まで引き上げれば、ふわりと彼の香りが漂った
彼が居ないだけでこんなにも世界が変わるのだと、自分でも驚く



難しい事は考えない
思考から意図的に追い出すように努める

彼が……この船の人達の幸せこそが


私の幸せなのだから














この場所に居るべき人は、

(隣に在る筈の温もりを、今夜は感じない)





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あきゅろす。
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