美しき桜、甘い香り(兼続)

ぽかぽかと温かい日差し。
庭の大きな桜のその下で私は紗耶と花見をしている。

「口に合うかな?」

「あぁもちろんだ。とても旨いぞ。」

そう答えると空いた杯に酒を満たし、紗耶は嬉しそうに笑った。



『桜が咲いたら一緒に花見をしよう。』

誘ったのは私からだった。

同じ殿に仕える者として、友人として共に過ごすうちに私の心が紗耶を欲した。

いつも絶やさぬ笑みを私だけのものにしていまいたい。
ほかの誰にも渡したくない。

日に日に想いは募るばかりだ。


「桜、きれいだね。」

「そうだな。」

二人で見上げた桜は可憐な花を開かせている。

「庭にこんな素敵な桜の木があるなんて羨ましいな。」

「そうか?」

「そうだよ。私、桜の花大好きなんだ。」

桜から私へと向き直り

「だから誘ってくれてありがとう。」

にこりと笑った。


その笑顔があまりに美しく、私の胸の鼓動が速まるのを感じた。

思わず杯を飲み干すと紗耶が覗きこむ。

「あまり飲み過ぎないでね。早く酔っちゃったら」

「酔ったら?」

「お花見終わっちゃうでしょ。」

「桜が見れぬか。もし私が酔い潰れたとしても好きなだけ見ていて構わぬぞ。」

私より桜か。それも淋しいものだな。


「ううん違うの。その、兼続と…もう少し一緒にいたいなぁ…なんて思って。」

紗耶はもじもじと視線を逸らしながら言った。

一瞬意味がわからなかった。
私と一緒にいたい…!

その言葉の意味を理解すると思わず抱き寄せていた。

「か兼続!?」

「私もそなたと一緒にいたい。」

照れて頬を染めた紗耶が愛しい。

「桜も美しいが、私には紗耶の方が美しく見える。」

「…やっぱり酔ってるの?」

腕の中の紗耶が私を見上げる。

「否。私は本気でそう思っているのだが。」

視線が絡み合い一段と赤みが増す紗耶の額がコツンと肩にあたる。

「…ばかぁ。」

ふわりと桜より甘い香りが漂う。
その甘さが心地よい。


「紗耶、私はそなたを愛しているぞ。」

そう囁くと紗耶の細い腕が背に回される。

「私も兼続が大好き。」



桜咲く春。私は桜以上の華を手に入れた。


――明日も明後日も共にそなたの好きな桜を見よう。
来年も再来年も、いつまでも一緒に。













もうすぐ春だから桜の話。

兼続さんと一緒に花見っていいなぁ。

照れもせずいっぱい愛の言葉囁いてくれそう。

兼続さんは酒に酔って、私は兼続さんに酔うのが基本かと。


お題配布『緋桜の輝き、』様



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あきゅろす。
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