雪だるまに口付けを(三成)


朝目覚めると外は白銀の世界だった。

めったに雪が降る事ないこの地域で積雪は珍しい。


「これでは政(まつりごと)に支障をきたす。」

雪対策のない城は間違いなく機能しなくなるであろう。


また仕事が増えたな。


そう思い三成は真っ白な雪を忌ま忌ましげに見ながら歩きだした。







各所の手配を終え、やっと自身の仕事をしようと執務室に向かう途中の中庭で紗耶を見つけた。

どうやら雪だるまを作っているらしい。


「のんきな奴だ。」

少々お疲れの三成は、一人楽しげに雪と戯れる紗耶の無邪気さに呆れつつも、癒されていた。



小さいながら胴体、頭部分に顔を作りだるまが出来ると紗耶はキョロキョロと辺りを見回す。
『あった!』と言って雪を被った葉っぱを2枚取ると額部分にバランス良く挿す。


まさか…。


三成はだるまが誰であるか認めたくなかったが、紗耶が取り出した物で確定してしまう。


それは小さな扇。
枝で作った手に広げて持たせている。


なぜ俺を雪だるまに…。


三成は眉間にシワを寄せた。


紗耶は満足そうに雪だるまを眺めてつぶやく。


「三成…大好き。」そう言って雪だるまに口づけた。

「!!!!」







「殿、そんなところで何をしてるんですか?」

後ろからやって来た左近が固まっている三成に声をかけた。

「ばっ、馬鹿!左近!」

黙らせようとした三成だったがすでに左近の声に気づいて紗耶が振り向く。


「あっ、み、三成!いつからいたの!」


返事をしない三成に告白とキスを見られたと悟り、顔を真っ赤に染めた紗耶は逃げるように走り去る。


「!」

なんて声を掛ければいいのか分からず三成は舌打ちした。


「何事ですか?おや、あれは…ほぉ〜」

三成雪だるまを見て左近が含み笑いをしながら雪だるまと三成を交互に眺める。


そんな左近のにやけ面にいらついた三成は、左近の足を思い切り踏み付け歩き出した。


「とのぉ〜。」

左近は足を押さえてしゃがみ込む。



左近になど構ってる暇はない。俺は忙しいのだよ。







後日、三成はそっぽを向いたまま紗耶に告げるのだった。

「次からは雪だるまではなく俺にしろ。」








左近すまぬ。
我が殿はそういう人です。



紗耶さんは朝、雪を見たときから三成だるまを作るつもりで扇を持っていました。

この雪だるま、左近いわく「殿そっくり」との事。

紗耶さん器用ですね。


お題配布『緋桜の輝き、』様



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あきゅろす。
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