星のかわりに(清正)



――ほら流れ星!
――えっ!どこ?どこ?
――もう消えた。
――あ〜。見えなかった…。ねっ、何お願いした?
――教えない。
――なんで?教えてよ〜。
――駄目だ。
――ケチ。






星が輝く夜。木の枝に座って空を見上げていた。


聞き覚えのある足音が近づいてくる。

この足音はきっと。


「紗耶、いるのか?」


ほら清正の声。


「いるよ。」


木の上から声をかける。



「やっぱり居たか。みんなお前がいないと探してるぞ。」


「えぇ〜?こんな時間になんで?」


「さあな。とにかく降りて来いよ。」


「やだ。清正がここまで迎えに来てくれたら降りるよ。」


「俺まで登ったら枝が折れるだろ馬鹿。」


「そうかな。」


確かに小さな頃ならともかく、今の私達じゃ確実に折れちゃうかもね。




「昔さぁ、清正はここから流れ星見たよね。」


「あぁ。」


「願い叶った?」


「さぁな。」


清正は素っ気なく答えた。






「戻らないのか?」


「うん。清正、あたしね、流れ星見たいの。」


「願い事か?」


「うん。どうしても今夜お願いしたいの。」


明日、清正は初陣する。
だから願い事は今夜じゃないと駄目なんだ。



「流れ星なんていつ見れるか分からないんだよ。明日早いんだから清正はもう戻って。」


「明日戦に行く。だからこそ、ここにいる。」


「清正?」


それってどういう意味って聞こうとしたら清正が指差した。


「おい!」


「あっ!」


星が流れてしまった。




「お願いが…。」

出来なかった。




「お前何を叶えてほしいんだ?」


「………教えない。」



「どうしても叶えたい願いなんだろ?今夜じゃなくちゃ駄目なんだろ?教えろよ。」


「やだ!」


断然拒否。

また見逃さないように空を見上げていたら下にいた清正が大きなため息をついて、私の顔を見上げられる場所に来た。



「紗耶。」


「何。」


「お前の願い、俺が叶えてやるから降りてこいよ。」


清正が地上から私を呼んでいる。



「清正が、叶えてくれるの?」


「あぁ。」




胸がドキドキ言っている。





「絶対?」


「絶対だ。」




自信満々に清正が笑ってる。
この顔が大好きだ。




「何があっても?」


「お前の願いだ。何があっても叶えてやる。」





清正は嘘をつかない人なんだ。
出来ない約束もしない人。




「分かった。行くよ!」


「えっ!おい馬鹿!」



あたしは枝から飛び降りた。
清正の胸めがけて。






「…………………ふぅ。」


「さすが清正。」


清正はしっかりあたしを受け止めてくれた。



「お前!夜なんだぞ!昼間でも危ない事をこんな暗い………紗耶?」



あたしは清正に強く抱き着いた。



「清正、あたしのお願い…」


「言えよ。」


「無事に帰って来て…。」


「叶えてやるよ。」




少し笑った声でそう言うと清正はあたしを強く抱きしめる。
最初から分かってたんだよね。
きっと。

あたしが何をお願いしたいのか。




「お前が待っていてくれるこの場所に必ず帰ってくる。」



「うん。待ってる。」







願いを叶えてくれるこの星は流れ星のように消えたりしない。
これからもずっとあたしの隣で輝いているんだから。


















オマケ

「で、清正がお願いした事ってなんだったの?」

「教えない。」

「まだ教えてくれないの?ケチ。」

「ケチってお前(お前とずっと一緒にいたいと願ったなんて言えるか馬鹿。)」





久しぶりのお題です。
清正らしくないけど清正が書きたかったんです。


短い夢は楽しいな。


お題配布『ひよこ屋』様




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