愛しさの音(兼続)


「まだかなぁ。」

晴れた日の午後。
紗耶は屋敷の入口から通りを眺めていた。

「まぁ紗耶さま。殿様のお帰りは夕刻になると伺っております。そこで待たれるのはお早いですよ。」

「でも、もしかしたら早く帰って来るかもしれないでしょ。一番に迎えてあげたいもの。」

今日愛しい人が帰って来る。嬉しさを抑え切れず満面の笑みを浮かべる紗耶を見て使用人達も笑顔になる。


少しずつ時間が過ぎて日が傾いた頃、屋敷に向かって馬が近づいてくる。

騎乗の人は間違いなく紗耶の愛しい人。

「お帰りなさい兼続さん!」

「ただいま紗耶。」

馬を降りた兼続に紗耶が駆け寄る。

「怪我とかしてない?」

「あぁ、この通りだ。」

怪我はないと長い戦から帰ってきた兼続はにっこり笑って両腕を広げる。

「おいで。」

そう言われて紗耶は兼続の胸に飛び込み、愛しい人の香りに包まれる。

「…無事で良かった。」

ぎゅっと紗耶は抱き着いて「あいたかったよ。」と小さな声で言うと

「私もだ。」と兼続も紗耶を強く抱きしめる。

そっと兼続の胸に耳をあてると

とくん とくん

胸を打つ音がした。


愛しい人の命の音を聞ける幸せに紗耶は微笑む。

「どうかしたか?」

「兼続さんの心臓の音、とっても綺麗な音がする。」

「そうなのか?」

「うん。」

「じゃあ紗耶の心臓の音聞かせてくれ。」

「きゃっ!」

兼続は小柄な紗耶を抱えあげると右腕で支え胸に耳をあてた。

「ちょっ、恥ずかしいよ。」

「黙って。」

兼続は紗耶の少し速い鼓動を聞きながら瞳を閉じた。

「…綺麗な音だな。」

「そ、そう?」

「あぁ。 愛する者の命の音だから綺麗に聞こえるのだろう。」

兼続は紗耶を下ろすと瞳を覗き込む。

「紗耶、愛しているぞ。」

何度も聞いた言葉だがそのたびに紗耶は頬を染め、そんな所が可愛いと兼続は目を細める。

「私も兼続さんを愛しています。」

静かに唇を重ねると兼続は紗耶を抱きしめた。




とくん とくん

耳をあて聞こえるのは愛しさの音。
いつまでもあなたの音を聞いていられますように…。







使用人A「…相変わらずの仲の良さだねぇ。」
使用人B「さすが愛を語るお方じゃな。」
使用人C「仲がよろしいのは良い事だが、わしらにゃあ目のやり場に困る。」

なんて言ってたりして。
いちゃこらするのは部屋に帰ってからにして欲しいらしい(笑)

やっぱり愛の人兼続も紗耶ちゃんに会いたくて仕方なかったようです。

お互い我慢出来ずいちゃこら。
やっぱりいちゃいちゃした話は良いなぁ。

お題提供『風雅』様



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