愛しい人(元親)

カタン

物音が聞こえ元親は目を覚ました。

闇夜に耳を澄ませば音は中庭から聞こえる。


忍び込んだのは賊か?あるいは…敵襲か。


そばにある三味線を手に慎重に中庭へと続く障子を開くと、ふっと息を吐いた。


中庭にある池の周りを恋人の紗耶が歩いている。

時折、池を覗き込んだり踊るように跳びはねていた。


敵襲などではなかったな。


元親は中庭に降りる階段に座り込み紗耶の姿を眺めた。

月明かりに浮かぶ白い肌と黒髪。ちらりと見せる細い足に欲情をそそられる。

「あっ、元親さん。」

紗耶は元親の姿に気づくと駆け寄ってくる。

「どうしたのですか?こんな夜更けに?」

階段をひょいと登ると、元親の隣に腰を下ろす。

「…それはこちらの台詞だ。何をしていた。」

「月が綺麗だったから。最初はここから見上げてたのですが、池に映る月も綺麗だなって。」
「それだけで跳びはねたりしていたのか?」

「あっえっと、それは…」

紗耶は口ごもる。

「元親さんに聴かせていただいた曲が頭の中で流れていて。とっても素敵だったから。」

少し頬を赤く染めた。

「そうか。」
元親は紗耶を抱き寄せると、片手で紗耶の頬を撫でる。

「気に入ったのか。」

「…はい。」

元親の指先が頬から顎へと移り互いの顔が近づく。その繊細な指先に紗耶はぞくりと震えた。


「その曲の奏者はどうだ。気に入っているのか?」

「もちろんです。あの曲を弾いて下さったのが元親さんだから好きなのです。」

紗耶は一段と頬を染めた。
そんな紗耶の様子を見ながらなおも問い掛ける。

「俺のことが好きか。」

「そ、そうです。」

元親に覗き込まれ紗耶は恥ずかしそうに瞳をそらす。

「俺の目を見てちゃんと言ってくれ。お前の言葉が聞きたい。」

「元親さんが、大好きです。」

紗耶はまっすぐ元親の瞳を見つめて小さな声だが、しっかり言った。

すでに何度も聞いている言葉。それでも紗耶の声で聞きたかったのだ。
愛しくてたまらない大切な存在の紗耶から。

「…上等。」

元親は満足そうに笑うと紗耶の唇を奪う。

何度も深く口づけると紗耶を腕の中に閉じ込め優しく髪を撫でる。


お前がいなければ俺は生きて行けぬ。
いつでも俺のそばにいてくれ。


「紗耶、離さぬぞ。」

「はい。私もいつまでも元親さんのそばに居させて下さい。」

元親はにこりと微笑んだ紗耶を抱きあげると歩き出した。

「ちょ、元親さんどこに?」

「…離さぬと行ったろう。」

紗耶は恥ずかしそうに元親の胸に顔を埋める。

そんな腕の中の愛しい存在を見つめ元親は幸せそうに微笑んでいた。










お初元親さん。

この後はきっと…ムフフ。

元親さんは私の中ではセクシー担当です。声のせいか言葉のせいか…。
しかもちょっとSなら、なお良しなのですが。

しかし誰だかわからぬ人に(汗
もう少し修業します。


お題配布『静夜のワルツ』様



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