広がる桜色(幸村:学パロ)


昼休み、購買へ向かう私の背中を誰かが叩いた。

「幸村、今からお昼?」

私の後ろからひょこりと顔を出したのはクラスメートの紗耶殿。

「はい、今購買にでも行こうかと」「じゃあこっちで一緒に食べよ。」

紗耶殿はにっこり笑うと私の腕をとって歩き出した。

「幸村に責任とってもらわないと。」

「責任って?」

連れて行かれたそこには大きな桜の木の下。
学校の裏に桜があるなんて気づかなかった。

「ここ学校の片隅過ぎてみんな案外気づかないんだよ。」

驚いた私に気付いたかのように紗耶殿はシートを敷きながら話す。

「私もついこの間気付いたんだ。で、こんなに綺麗だからお花見したいなって思って。」

はいどうぞ、とシートの隣に座るように促される。

「でね、今日稲ちゃんとお昼ここで食べようって約束してたんだけど、急に彼氏に呼ばれちゃってだめになっちゃったの。…だから幸村、責任とって。」

紗耶殿は大きな弁当箱を開けた。一人で食べるにはかなりの量だ。

「稲ちゃんの彼は幸村のお兄さんでしょ。」

そうだ、兄上の彼女の稲殿は何度か家に遊びに来ている。

「確かに兄です。」

「でしょ。だから一緒に食べよ。朝頑張って作ったけど、私ひとりじゃ食べ切れないもの。」

「でも、その、申し訳ありません。兄がご迷惑をおかけしたのに、私がいただくわけにはいかないのではないかと…。」

稲殿とお花見するのを楽しみにして、一生懸命作ったお弁当を私が頂いて良いのだろうか。なんだかとても心苦しい。

「ごめん…謝ってほしいんじゃないの。」

「紗耶殿?」

「稲ちゃんもすごーく謝ってくれたの。だから別に怒ってないんだ。でもお弁当もったいないし、誰か誘って…って思ったら私…。」

紗耶殿は少しためらって、私の袖を掴んだ。

「幸村に食べてほしいな…一緒に桜がみたいなぁ…って思ったんだ。」

その言葉に、うるさいほどに私の胸が鳴り響く。

「だから、責任とってなんて言ってごめんなさい。嫌だったらいいんだ。」

弁当を片付け始めた紗耶殿の手をとった。

「待って下さい。私は、一生懸命作ったお弁当が兄のせいで無駄になってしまったのが本当に申し訳ないと思ったのです。だけどその反面、紗耶殿の手作りが食べられるのを喜びました。だから、お手製のお弁当を私に食べさせてくれませんか?」

以前から気になる存在だった紗耶殿の手作りが食べられるのは本当に嬉しかったのです。

「ありがとう。」

にっこり笑うと紗耶殿の広げ直した弁当から卵焼きを摘み私の口に運ぶ。

「味…どうかな?」

「おいしい。ちょうどいい甘さですね。」

「よかった…。いっぱい食べてね!」

とっても嬉しそうに紗耶殿が笑うから、私も笑顔になってしまう。




ぽかぽかと暖かな日差しと美味しい食事で満たされた満腹感から少し眠くなった。
それは隣にいる紗耶殿も一緒らしく小さくあくびをしている。

「暖かくって、眠くなってきちゃった。」

「美味しいお弁当のお礼にお貸ししますよ。」

そう言って私は桜に背を預け肩を叩く。

「えっ、でも授業が…ん、たまにはいいかな。」

「どうぞ。」

「…ありがとう。」



見上げれば広がる桜の花と、私の肩にもたれた桜色の頬の紗耶殿。

どちらも私に穏やかな春を告げていた。


















桜第三弾幸村編です。
今回は学園もので。

でもなんか『紗耶殿』って呼びかたはないかなぁなんて書きながら思いました。

それを言ったら政宗の『わし』もなんだかなぁですけどね。


稲ちゃんと兄上は実は物陰から見ていたりします。

兄上は紗耶ちゃんが可愛い弟の肩にもたれたときガッツポーズをとってましたよ。



お題配布『緋桜の輝き、』様



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あきゅろす。
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