[携帯モード] [URL送信]
Let's expect the age.
屋敷に帰ってくると、そのまま卿の部屋まで連れてかれた。ラバスに理由を聞くと、行く前から言われていたそうだ。

「失礼します、只今戻りました」
「…随分と早かったな」

ラバスが礼儀正しくノックした後、卿の部屋へ入れば、ソファーで足を組み、本を読んでいた卿が此方を見て言った。

「ラバスが早く帰りたいって私の腕引っ張るもんだから、早く帰ってきました。そのお陰でお土産買い忘れたんですけど」

じとーと、恨めしそうにラバスを睨み付けるが、ラバスは全く気にしていない様子である。
……むかつく。

「あ、そうそう…私の杖見て下さいよ卿!」

卿に近付き、懐に入れていた杖を見せる。

「ほぉ、白とは珍しいな…」
「ですよねーでも、綺麗で気に入りました。何でも、卿の杖の兄弟杖らしいですよ」

さらりと暴露するも、卿はたいして驚きもしなかった。その代わり、ラバスが私の発言に引っ掛かったらしく、突っかかってきた。

「オリバンダーはそんな事言ってなかっただろうが」
「あぁ、確かに老は"ある人物"て言ってたけど…材料の不死鳥の尾羽は、珍しいから」

ですよね、卿?と同意を求めれば、そうだな…とだけ返された。
丁度その時、控えめなノックの後にルシーが入ってきて、私は大事な事を聞き忘れていた事を思い出す。

「という訳で、卿とルシーに質問です。私は幾つに見えますか?」

どういう訳だ、というツッコミをラバス以外の二人から頂いたが、スルーする。
さぁて…果たしてこの二人は、一体私を何歳に見ているのだろうか。

「……15、くらいでしょうか」

先に答えたのは、ルシーだった。控えめに言われたその数字は、偶然にもラバスと同じである。

「卿は?」
「…21辺りか」

ぽつり、呟くように言われた数字に、目を見開く。ラバスとルシーが、ありえないという表情をしているが、それどころではない。
卿の事だから、もっと下に見てると思っていたのに、まさか当ててくるとは。

「どうして判ったんですか、卿」

外見で、私が年齢を当てられた事は、元の世界でも殆ど皆無に近かった。ラバス達みたいに、大抵の人間が若く見ていて、よく友達に自慢していたものだ。
なのに、卿は一発で言い当てた。東洋人は西洋人に比べ、童顔であるにも関わらず、だ。

「…勘だが」
「おぉ、マジでか。流石は闇の帝王…侮れないわ」

勘だと言われたら、何故かしっくりきた。闇の帝王ともなると、鋭い勘でも身に付くのだろう…と自分で勝手に結論付ける。

「ちょっと待て」
「ん?」
「本当にその…21で?」

不意に、ラバスとルシーが私の肩を掴んで訊ねてきた。

「え、やっぱ見えない?てか、大体の人がそんな反応するんだけど」

身長低いからかな?と首を傾げて言えば、これでもかって程に目を見開く二人。
いやいや、そんなに驚かれても困るから。

「まーそういう訳だから…とりあえず敬え、ラバス!」
「って、何で俺だけなんだよ!」
「だって、ルシーは一応敬ってくれてるし」

そう言ってルシーを見ると、少し困った顔をされた。

「あーでも、敬語は止めてよね。真面目に」

敬語の時の違和感を思い出して、釘を差す。敬えと言っても、流石に敬語は慣れてないし嫌である。

「そういえば、卿は幾つなんですか?」

ふと、気になったから聞いてみる。単純に計算すれば、40代後半の筈…だよね。

「お前はどう思う?」
「…見た目は20代後半っぽいんですけど、それだと計算合わないし。40代はいってますよね?」

素直に言ってみれば、卿は無言になった。えぇ、何で無言?もしかして、間違ってた…?

「……そんな事より、明日は時間がある。早速魔法を教えてやろう」
「え、まさかの教えてくれないパターン?!」

綺麗に話題を変えられ、思わずつっこむ。

「…私の歳など、どうでも良いだろう?」
「いや、どうでも良くないですよ!歳の差とか微妙に気になるしっ」

つっこんだノリのまま、卿の腕を掴んで言う。
"どうしてそんな物が気になるのか"と聞かれたら、"何となく"としか答えられないけれど。

「……いつか、気が向いたらな」

少しの間を開け、そう答えた卿の顔は、何処となく悲しげに見えた。



Let's expect the age.
年齢を予想してみよう



(どうして、)(そんな顔するの…?)

.


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!