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About the name and the future.
「ヴォルデモートさん、お腹減りました」

冷えかけた紅茶を飲み干し、唐突に告げる。ヴォルデモートさんはちらりと此方に視線を向け、判りやすく溜め息を吐いて、仕方ないといった風に動き出した。

「ついて来い」

そう言い、そのまま部屋を出て何処かへ行くヴォルデモートさんを、慌てて追いかける。着いたのはただっ広い食堂で、二人分の食事が既に準備されていた。

「わ、凄いご馳走…」

テーブルに並ぶ豪華な食事に、思わず感嘆する。そして、向かい合わせに席につき、食事を始めた。料理はとても美味しく、ついつい沢山食べてしまう。私はあまり食べない方なのだけど。

「あの…」

食事の途中、ふとヴォルデモートさんに話しかけた。長い沈黙に耐えられなかったし、一つ聞いてみたい事もあったから。

「何だ?」
「えと、ヴォルデモートさんの名前って長いじゃないですか。だから、卿って呼んでも良いですか?」

小首を傾げ、お願いしてみる。きっと駄目なんだろうけどさ?

「構わん。私の事は好きに呼べ」

……了承してくれた?!しかも、何気に一人称が俺様から私に変わってるし!
予想外の事に、一人で軽くパニックに陥る。あぁ、冷静に、冷静に。

「じゃあ、卿って呼びますね」

確認するように言えば、うむ…と頷いてくれた。若干嬉しそうなのは何故だろうか。とりあえず、可愛い。可愛いよこの人。これがあの闇の帝王なの?!
にやにやと顔がにやけないように必死になって、テーブルに隠れて自分の手を抓る。あ、これ地味に痛い。

「…今後の事だが、とりあえず明日からお前に世話役を何人かつける。困った事があったら、そいつらに頼め」

世話役…え、マジで?それってやっぱり死喰い人の中から選ぶんだよね…どうせなら知ってる人が良いなぁ。

「それと…多少なりとも魔法を扱えるようになって貰う。私が暇な時にでも教えてやる」

これは嬉しい。けど、一つ疑問が。

「…私でも、使えるんですか?」

魔力がどーとか話してたけど(2話参照)、あれって私の話?あ、でも、私マグルじゃね?両親普通だし。

「魔力は私以上にある。使える筈だが?」

ワォ、卿より魔力あるのか。吃驚だな…いや、マジで。あーでも、魔法ってアレだよね。杖いるじゃんね?私杖なんて持ってないんだけど。

「杖は後日買いに行く。心配はするな」
「…ねぇ卿。どうして私の考えてる事が判るんですか?」

卿が、私の考えてる事を見抜いたかのように言葉を発するもんだから、思わず訊ねてしまう。だって普通だよね。もしかしたら、開心術でも使われてるんじゃないかって心配になるもん。

「開心術など使わん。私は読心術を心得ているだけだ」

開心術と読心術って、どう違いがあるの?!どっちも相手の心を読むモノじゃないっ!

「冗談だ。さっきから自分で口に出していた」
「…マジですか。私どんだけ馬鹿なの」

気付かぬ内に声に出していたらしい。何処からだ?あぁ、自分の馬鹿さ加減に呆れるわ。

「それよりも、何故お前が開心術について知っている?」

………墓穴掘った。うわぁ、凄い見てる。刺すように見てる。素直に話さなきゃヤバい…かな。

「この世界について、私は多少知ってるんですよ」
「知っている、だと?」

素直に言えば、訝しげに見られてしまった。んー仕方ないか。

「えぇ。少しの過去と、未来で起こる出来事について」
「!それは、」
「言っておきますが、教えませんよ?」

私の話に食いついてきた卿を、笑顔でバッサリと斬る。食いついてくる事は判ってたけど、やっぱりって感じだな…

「…何故だ?」

教えて貰えないのが不満なのか、低い声で訊ねてくる卿。

「だって、未来を知ったら、今が楽しくないじゃないですか。未来は変わるかも知れないし。卿だって、決められた未来なんて嫌でしょう?」
「………」

同意を求めるように言えば、ただ無言で見つめてくる。予言より、確実な未来など知らぬ方が良いのに。どうせ貴方は…あぁ、でも。

「ただ、」
「?」

急に黙り込み、また話し出した私に、卿が首を傾げる。

「ただ、私が知っている未来の中で、私が変えたいと望むモノを、私は変えてしまうかも知れない。それが例え、禁忌の域に入る事だとしても」
「………」

真っ直ぐと卿を見据えて言い切る。これはただの意思表示で自己満足。そんな簡単に出来る事ではないし、タイミングを逃せば大変な事になってしまう程に難しい、私の願い。出来る事なら、誰にも死んで欲しくないから…なんて、そんな理由で未来を変えようとするのは、愚かな事だろうか?

「…なーんて、何か変な方向に話が飛びましたね。てか、逢ってまだそんなに時間経ってない人と何でこんな話を…」

そうして卿に背を向け、ぶつぶつと呟き始めた私を、卿が何とも言えない表情で見ていたなんて、私は知る事がなかった。



About the name and the future.
名前とこれからについて


(考えたら大変だな…)(とりあえず、頑張りますか)

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