裏切りの代償
ストーカーを諦めさせる方法(謳雅side)
視線が俺を苛立たせる。
それなりに人が多いのに、俺とこっちをただじっと見る視線だけがこの世界から切り離されたようで、今はそれだけしか感じない。
だから、その視線だけが俺を苛つかせる。
何でこんなに見られてるのか分からない。
まるで不良のような金髪が中等部の学ランに似合わなさすぎるのか、それともそのダサい学ランがあのお坊ちゃま学園の制服だということに驚いてるのか、俺を見て振り向く人はよくいるが、こんな付いてきてまでじっと見るような奴は流石に・・・・・・
・・・俺の歩調に完璧に合わせて自分の気配を殺そうとしてるのに気付いた瞬間、さっきまでの苛立ちは恐怖に取って代わった。
気付くと、俺は既に家の近くの住宅街を歩いていて。
視線に気付いたのは電車を降りたあたりからだ。バスと歩きの時間分、つまり20分は軽く超える。
・・・20分なんて尋常じゃない。
じっとただ俺だけを熱心に見るその視線に気付いた瞬間に気付くべきだった。
学校ではそんなの日常茶飯事だったから、苛つくだけでそこまで頭が回わなかった。くそ、あいつらのせいだ。
・・・しかしどうするべきか。
まさか自分がストーカーされるようになるなんて、誰も思わないだろ。
一方的な絡みつくような視線は、思ったより怖く感じるらしい。
現に、自分は驚くほど恐怖しているのだから。
・・・こめかみを冷や汗が伝った。
「あれ、謳雅?」
「っ!? あ、一樹か」
恐怖してるところに声をかけられたせいで、一瞬肩が飛び跳ねた。
それをごまかすように慌てて振り向くと、幼なじみが立っていて。
・・・・・・そうだ。
「なぁ一樹、ちょっとお前の家寄っていいか?」
「あ?いいけど今史上最高にとっちらかってるぜ?」
「・・・まぁ、それでもいいから上がらせてくれ」
「おぅ。じゃあ早く行こーぜ。こんな寒いとこいらんねー」
感じる視線は一樹と出会ってから、より一層強くなった気がしたが、このまま家に帰って家がバレるよりはマシだろう。
俺は、一樹の汚部屋がさらにいつもより汚いらしいことを想像して、何とか気を紛らわせようと試みた。
何とか、ストーカーより自分の想像の方が怖くなって気を紛らわせられたが・・・一樹の部屋は想像以上だった。
[次へ#]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!