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長編
一緒に帰ろう2
しばらくしてゆうくんがやってきた。
急がなくても良かったのに、ゆうくん息が
あがってるから、頑張って急いだんだろうな。申し訳ない。
「ごめんね、待たせて」
「待ってないよ全然!ゆうくん速すぎるよ!」
「はは、さ、帰ろう?」
「…うん」


電車の方面は違うから、学校から駅までの
短い間だけだけど、いろんな話をした。
サッカー部のこととか、先生のこととか、
クラスのみんなのこととか。


「しゅう…くん」
会話の中で、ゆうくんが突然ぼそっと
言った。
「え?」
しゅうくん?
「ねえねえ、秋一くんってちょっと言い
づらいからさ、秋くんって呼んでもいい?」
はっ!そういうことか。
秋くんなんて呼ばれたことないな。「あき」って読めるから、あっきーって呼ばれていたことはあった。それから普通に三上、三上
くん、秋一くん。
秋くんは初めてだ。

「い、いいよ!なんでもいい!なんでも
嬉しいから!」
僕が力いっぱい言うと、ゆうくんはくすくす笑って、それに、と続ける。
「秋くんは俺のことゆうくんって呼んでるし。ゆうとくん、じゃなくてさ」
「あ、それは、みんなそう呼んでるし…」
「えー、そうかな」
そうだよ。
特に女の子がゆうくんゆうくんっていつも
騒いでるし。
男の子だって呼んでる子いるよ? 「ゆう」だけど…。ゆうくん友達いっぱいいるし。


…うん、そうだよな。王子様なんだもん。
人気者なんだ。
そんなゆうくんと、僕、今一緒に帰ってる
なんて。すごいや。

僕は、自分のことが嫌いなんだけど、
こうしてゆうくんと話してるときの自分の
ことは、好きになれる気がするんだ。
だってすごいでしょ?


嬉しいな、楽しいな。
でも今隣にいる王子様は、「みんなの」王子様なんだよ…。そう自分に言ってみたら、
なんだか少し悲しくなった。なんでだろ。


駅まであと少し。
この時間が、ずっと続けばいいのにな。




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