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過去Novel


途端、僕の体が宙に浮いた。

嘘のように体が軽くて僕の黒い髪が重力を失って舞い上がる。


「軽いな、天使みたいだ、美世。」


僕は辰弥にウエストを掴まれて持ち上げられていた。
そのまま辰弥はくるくると回る。遠心力で僕の体は地面に水平になって、まるで飛んでるみたいだ。
その時僕は刹那に奇跡すら感じたんだ。

少しして下ろされて抱き締められる。


「お前が飛びたいならいくらでもこうしてやるから、1人で飛ぼうとするな。」


辰弥の厚い胸板に顔を押し付けながら僕は戻ってきた重力に酔った。



「…猫が死んだの」


ポツリ、ポツリと僕は今日の出来事を話した。
辰弥は穏やかに頷きながら僕の長い髪を撫でる。
そして


「じゃあ墓を作りに行こうか。」



「怖かったんだな、もう大丈夫だならな。」
と言った。


きっと僕が欲しかった言葉。

広大な奇跡の星よ、まだ人間の言葉は信用できないけれど、辰弥の言葉は信じてもいいかなと思う僕をどうか弱いと責めないで。




Fin


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あきゅろす。
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