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過去Novel
◇ブラックカラント

「僕は未成年なんだけど。」
此処はユピテルのとあるバー。
美世は隣でグラスを傾けている男に言った。
男もとい辰弥は紅い髪を間接照明に照らしながら色を含む笑いを浮かべる。
「そりゃそうだろうな。不貞腐れながらバーでケーキを頬張るようなお子様が成年な訳がない。」
む、と釣り目が薄く殺意と共に自分を映す。
辰弥はその瞬間が好きだ。
だからわざと勘に障る言い方をするのだ。
今日は美味い物を食わせてやるからと食事に誘われ、美世は仕方無くフォーマルな格好をしている。
黒髪を下ろし、紅いカクテルドレスに白のストールを纏い、スーツの辰弥と並ぶに相応しい装いだ。
美世はケーキを食べ終わるとスツールの所為で地面に届かない脚をぶらぶらと振りながら喉が渇いたと我が儘を言い出す。
格好がそれなりでも中身は変わらない、反抗心の表れだ。
そんな仕草も可愛いと笑いながら、辰弥は何やらバーテンダーに頼み事をした。

少しして美世の前に置かれたのはグラスの中の紅い紅い湖。
「イケナイ大人だね、貴方は。」
そう言いながらグラスの縁を撫でる。
紅い服、紅い瞳、紅いカクテルに沈むのも、また紅いチェリー。
黒い美世は紅に包まれ染められていく。
じわりじわり、侵すように。
紅が随分と好きになってしまったことを自分に言い訳するようにグラスに口をつける。
貴方が悪いんだ、僕に紅が似合うだなんて言うから悪いんだ、と。
それを横で見ている紅い男は、至極嬉しそうな顔をしながら、お前には紅が似合うな、と耳元で囁くのだった。




Fin




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