結婚を口実に
「俺の嫁になってください」
「……何言ってんのお前?」
「いやだから、結婚しようって」
「……お前本当に教師?つか大人なの?」
「たりめーだろ、見えねぇの?この真面目な顔」
「……」
いきなり隣に座ってきて真面目な顔してくるもんだから、どんな深刻な事言ってくるのかと思えば…何、結婚って。
呆れて何か言い返すのも疲れるから、このバカを放置して俺は向かいのソファーに横になる。
銀八とは半年前くらいに知り合った。最初はドッペルとかそんなのかと思ってびっくりしたけど、関わりを持っている内に俺とは違う奴だと分かった。もちろん兄弟とかそんな関係でもない。
でもやっぱり似ている所は多くて共感出来る事も多かった。そして互いに惹かれ合い、俗に言う恋人同士となったわけだ。まぁ男同士なわけだから、一応は公にバレないようにしている。
俺達の関係を知っているのは、新八と神楽だけだ。
「おい銀時くん、俺は放置プレイは大っ嫌いなんですけど」
「お前の頭が冷えるまでは放置プレイだコノヤロー」
「何だよ照れてんの?照れないで素直に喜んでいいんだぞ」
「…お前さ、俺達は男同士だって分かってるよな」
「分かってるよ。それを分かった上でのプロポーズだ」
「……男同士で結婚とか出来るわけねぇだろ…何考えてんだバカ」
横になったまま話す俺を見ながら黙る銀八は、よっこらせと立ち上がるとこっちに来た。そしてしゃがんで目線を俺と同じくらいにすると、俺の頬を撫でながらこう言った。
「別に公の場で結婚式挙げようって言ってるわけじゃねーんだ。ただ誓いのキスが出来りゃ俺は充分なの」
「…なんでそんな事しなきゃダメなんだよ。別に今のままでもいいだろ?」
「まぁそうだけどな。いいじゃねーの、たまには俺のわがままに付き合ってくれても」
少し寂しそうな表情で言われて断れるはずもなく…すぐに終わるからと納得してコイツのわがままを聞いてやることにした。
銀八は俺が起き上がるのを見て嬉しそうに笑いながら隣に座ると、俺をじっと見つめた。
「…愛してる、銀時。
俺と結婚してください」
さっき言われた時は何ともなかったのに、今は何だか気恥ずかしくなってきてついぶっきらぼうになる。
「…し、仕方ねぇから結婚してやるよ。ただし、俺ァ離婚は認めねぇからな!!」
「安心しろ。俺も認めねぇから」
「っ……じ、じゃあ…お前の嫁に…なります」
本当、俺達はくだらない事をしてると思う。けどなんか…すっげー幸せで、嬉しかった。
銀八の口付けは今までで一番丁寧で、愛の込められたもののように感じた。
「…よし、これで俺達は夫婦になったわけだ。つーわけで今日から俺ここに住むからよろしく」
「……は?」
「大丈夫、家賃は少しくらいなら俺も出すから」
「いや、そうじゃなくて、」
「これでずっと一緒に居られるな」
「ちょ、ちょっと待っ」
「嬉しいだろ?な、銀時くん」
「人の話を聞けェェェ!!!!」
というわけで、ほぼ強引に銀八と同居することになった。神楽も居るっつーのにそんなのお構いなしな銀八は、一緒に風呂に入るわ一緒に寝るわ、挙げ句の果てにはセックスまでしようとしてくる。
さすがにセックスは否定するが、見兼ねた新八が万事屋に寝泊まりさせると神楽に悪影響だからと新八の家によく連れていくようになった。
それをいいことに銀八は更に俺にベタベタしてきやがって、ババァに俺達の関係をすぐに知られちまった。
けどこんな生活も悪くないと思い始めた俺は、もう取り返しのつかない状況にあるみてぇだ。
まぁ…幸せだからいっか。
END
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