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俺的看病


「うー…」


頭が痛い、寒い、吐き気がする。
昨日、仕事から帰ってきてなんか頭が痛いとか思ってたら、今朝起きたら酷くなってて、今はベットで寝込んでる状態。


「よー気分はどうだ、って聞くだけ無駄か」

「…」

「まさかお前が風邪引くたぁなァ」

「うっせ…」


部屋で寝込んでたら銀八がやって来て、今日は休日だったおかげで銀八に看病してもらうことになった。

風邪なんていつぶりだろ、しかも寝込むほどの熱まで出るし……銀八が居てよかった。

「食いてぇもんは?」

「…いらない、食欲ねぇ」

「へー、珍しいこともあるもんだな」


いつもなら無理難題押し付けてくるくせに、なんて笑いながら言ってくる銀八に言い返す元気もなくて、部屋に来たかと思えばすぐに出ていっちまった。
別に心細いとかそんなんねぇけど、少しくらい気を遣ってくれりゃいいのに…。

「薄情者…」

一人になった部屋で小さく悪態を吐いてから、頭まで毛布を被った。
熱で頭がボーッとしてて頭も痛い。
寝てしまえばそんなことも感じないと必死で寝ようとしてたら、また銀八がやって来た。

「…今度は何」

「おいおいせっかく看病してやってるのにそりゃねーだろ」


もそっと毛布から顔を出せばすぐ隣に銀八が居て、じっと俺を見つめてた。
なんか、なんとなく恥ずかしくて顔を逸らしたらふわっと頭を撫でられて、いつもの銀八からは想像も出来ないことされて思わず目を見開いて銀八を見た。

「お粥作ってきたから、少しだけでも食え」

「…いらない、食欲ねぇって言ったじゃん」

「いいから、病人はおとなしく俺の言うこと聞いてろ」


ちょっと優しい一面を見せてくれたけど、強引なとこは相変わらずで、いらないって顔逸らしても無理矢理身体起こされた。

「ほら、食わしてやっから一口だけ食え」

「…」


これ以上抵抗しても無駄だと判断して、おとなしく銀八が俺の口元まで持ってきてくれたお粥を一口だけ食べた。
食欲なかったはずなのに、一口食べたらもっと食べたくなって、もっとと銀八に甘えてみた。
最初は驚いた表情してた銀八もすぐにあの優しい笑みを向けてゆっくりゆっくり食べさせてくれた。

「ごちそーさま」

「何だかんだで完食してんじゃねぇの」

「美味かったから仕方ねぇ」

「…今日はやけに素直だなー金時くん」

「うっさい一言多いんだよ」


ニヤニヤし出した銀八に苛立ちと恥ずかしさが込み上げてきて、また毛布を被った。
顔を見なくても銀八が笑ってるのは分かってたから、絶対に顔合わせたくなかった。

「じゃ、ちっとこれ片付けてくるから待ってろ」

「待たねーよバーカ」


今日の俺はおかしい。
表向きには悪態吐いてるけど、内心では銀八が戻ってくると思うと何だか安心してる。
これも全部熱のせいか、なんて理由付けてじっと銀八が戻ってくるのを待った。


「金時」

名前を呼ばれて、またまたひょこっと毛布から顔を出す俺。
何も言わずにじーっと銀八を見た。

「…なんか、犬みてぇだな」

「…」

「そんな睨むなって誉めてんだから」

「誉め言葉じゃねぇし」

「可愛いって言ってんの」

「…」

「あっれー金時くんまた熱上がっちゃった?」

「誰のせいだコノヤロー…」

「ははっ、悪い悪い、病人をからかうもんじゃねぇな」


さっきはすっげー優しかったのに、今はいつもの銀八だ。
ちょっと名残惜しい気持ちになりながら小さく咳き込んだ。

「そういや薬まだ飲んでなかったな」

「…いらない、ぜってーいらない」

「ったく、ガキじゃねぇんだから我が儘言うんじゃありません」


薬は嫌だ、変な味がするから。
銀八がなんと言おうと絶対飲まねぇと断言したら、溜め息を吐いてから俺に覆い被さってきた。

「な、何?」

「薬を飲まねぇ悪い子にはお仕置きだ」

「なっ…」


がっちり手首押さえられて、全く身動きがとれなかった。
病人にお仕置きとかどんだけ鬼畜なんだコイツ!とか心の中で叫んでたら、キスされて、

「んっ…」

すぐに銀八の舌が俺の口こじ開けて侵入してきた。
ただのディープキスかよ、なんて考えてた俺は完全に油断してて、舌が入ってきた次の瞬間には異物が入ってきた。
銀八が一瞬口を離した隙に吐き出そうとしたら、すぐにまた銀八にキスされて、今度は液体が入ってきた。とっさのことで異物と一緒にその液体を飲み込んだ。

「はっ…な、にすんだよ」

「ほら、ちゃんと飲めたろ?」

「…」

「よく出来ました」


へらへら笑いながら大雑把にでも優しく頭を撫でてくる銀八。
何がお仕置きだ、ただ口移しで薬飲ませただけじゃねぇか。


なんか今日の銀八はやっぱ違う。
優しくみえたと思ったら、強引にしてくるし、かと思ったらまた優しくしてくるし…。


「ま、あとは寝てりゃよくなるだろ
早くよくなれよな、お前が寝込んだままだと心配で仕方ねぇし、いつもの金時も好きだから俺」

「っな、何はずいことサラッと言ってんだバカ」

「最大の薬は俺の愛情、なんてな」

「あー、何か寒いわ」

「素直じゃねーなおい」

「うっせ」


なんだよ最大の薬は愛情って。
だからいつもと違ったのか?
ロマンチックなことでも言ったつもりなんだろうけど逆に引くわ。

…でも、今日みたいな銀八も嫌いじゃねぇかも、なんてな。


END


あきゅろす。
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