人の優しさを知った日
飲みに行った帰り道、後ろから声をかけられた。
『なぁおにーさん、俺と気持ち良い事しない?』
酒のせいもあった。
むしゃくしゃしてて明日は休みだからと仕事帰りに飲みに行って、夜になると賑わう通りを歩いてたせいもあった。
「……どうしたもんかねこりゃ」
酔いが冷めてきて冷静になった時には、俺はラブホテルに居た。ベッドに座ってとりあえず煙草に火をつける。
音がする方をちらりと見やれば、誰かがシャワーを浴びていた。
自分の服がまだ着たままであるのを見る限り、幸いまだ事を終えてねぇらしい。
相手には申し訳ないが、今から断るか。無かった事には出来ねぇだろうから三千円くらいは払って納得してもらおう。
そう決めた俺は煙草の火を消して立ち上がった。すると同時に、じわじわと体が熱を持ち始めた。
「っ……なんだ…こりゃ…」
体が疼いてきて息が荒くなる。ベッドの近くにあった小さな棚を見れば中身が空っぽの小瓶が置いてあった。
「…媚薬…か……」
原因を理解した所で体の熱は冷める事はなく、下半身が特に疼いてきた。
とりあえず早く相手の所へ行って我慢出来なくなる前に話を着けないとヤバイ。そう判断した俺はシャワールームへと向かった。
「…おい…開けるぞ…」
「あ?俺まだ終わってねぇけど?」
「いいから…」
「……あぁ、もしかして薬が効いてきた?」
こんな会話をしてる場合じゃないんだ、俺にはもう余裕がない。
承諾を得ずにドアを開けると、当たり前だが裸の男が居た。男はシャワーを止めると腰にタオルを巻こうともしないで“どうかした?”と首を傾げた。
「…悪いが…この話は無かった事に…してくれ…」
「は?」
「酔ってたから受け入れちまったけど…今は酔いも冷めてそんな気分じゃねぇんだ」
「……」
男は少し下を向いて何も言わなかった。きっと怒ってるんだろう。
そりゃそうだ、シャワーまで浴びてその気になってたのにやっぱ止めたなんて言われちゃあな。
「…悪かったな」
「ふざけんじゃねぇよ。ここまで来といて後戻り出来ると思ってんの?…大体、お前もう我慢出来ないんじゃねぇ?」
男は顔を上げると、ニヤリと笑みを浮かべて俺の股間を軽く、ゆっくりと撫でた。それだけなのに俺の体は過剰に反応してビクッと跳ねて俺は動けなくなる。
それを見た男は、悪戯な笑みを浮かべたまま慣れた手つきで俺の服を脱がし始めた。
「クス…やっぱり我慢出来ねぇんじゃん。仕方ねぇからここでヤっちゃう?」
「っ…いや、いい…自分でやるから、お前は帰れ…」
「……まだそんな事言うわけ?」
苛立った口調でそう言うと、俺をその気にさせようと思ったのか俺の背中に腕を回して抱きついてきた。
「…言っとくけど、お前が飲んだ媚薬はかなり強い奴だから、一回イったくらいじゃ熱は治まらないぜ」
「くっ…」
「クス…ほら、もうやるしかねぇんだからさ……俺の体触って?」
男は俺の手首を掴むと自分の腰に持っていき、片方の手は己のモノを掴ませた。
そして俺の手を使って自身を扱き始める。萎えていた男のソレは扱き始めると直ぐに膨れ上がった。
されるがまま、男の手によって俺は男の自身を扱き続ける。
「ン…はァ…ッ……」
色気のある息を吐きながら、男は気持ち良さそうな表情をする。
それを見ていた俺は、不覚にも興奮し、自分の意志で男の自身を扱き出す。
先端をクリクリと弄ったり、押してみたり、色々な刺激を与えてやれば男は俺にしがみついて簡単にイった。
「っあ……ん……なんだ…お前…上手いじゃん…」
イって力が抜けたのか、男はその場に座り込んだ。かと思えば座ったまま俺の自身を掴んでぱくっと咥えた。
「っな……」
「おかえひ…ひへやっから…」
「っ…ぁ…」
ペロペロと舐め回されて、媚薬のせいでたったそれだけでイきそうになる。
必死にイくのを耐えていると、それに気付いた男は歯を立てて甘噛みしやがった。そしてものすごい勢いで吸われて、呆気なくイってしまった。
「…っはァ…ごちそうさん…」
「く…」
「どう?俺、中々上手いだろ?」
「はぁ…はぁ…知るか…んな事」
「…まぁいいや。
んじゃ場所チェンジしようぜ」
イったばっかだってのに、俺の自身は既に再び膨れ上がっていて疼きも治まらない。どうやら男が言っていた事は本当らしい。
その場を動こうとしない俺を見て、男は早くしろよと言わんばかりの表情をして俺の手を引っ張ってベッドへと向かった。
ベッドの前まで来れば男は棚からローションを取り出して俺に手渡した。
「はい、これで俺のナカ解して」
一瞬言ってる意味が分からなかった。けど男が四つん這いになって尻をこっちに向けてきたのを見て直ぐに理解した。
「…何してんだよ、早くしろって」
「……お前、なんでこんなこと出来んだよ」
「こんなことって?」
「…好きでもない奴とヤるとか」
「あぁ、特に考えたことねぇや。
強いて言えば…金が欲しいからかなァ」
コイツ、嘘をついてる。
唐突にそう思った。
理由なんてない、ただなんとなく…そう思っただけだった。
「早くしろってば。この体勢結構恥ずかしいんだから」
「…さっきも言ったろ。この話は無かった事にしてくれって」
「………」
はぁ、と小さくため息を吐いて俺の正面に座り直した男は、何も言わずに俺の手からローションを取り上げて、自分の手に付けると脚を広げて自分で解し始めた。
その様子をただ見ることしか出来ない俺は、そいつの表情を見て気付いてしまった。
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