[携帯モード] [URL送信]

とある短編の共同作業
\


夏喜は逃げた女の子を追いかける。女の子は走っているが、全力で走っているとは思えない。男女の体格差を考えても、もっと速く走れるはずだ。
目の前の女の子の背中が順調にに大きくなってゆく。ぐんぐんと近づいてくる。
しかし、近づいたと思ったところで、再び女の子は加速する。
夏喜は離された。
やはり、何かが引っ掛かる。女の子は逃げる事が目的ではないようだ。なんだか、わざと引き付けて、そこに誘導していくような。

その時、

急に視界が開けた。
路地裏から脱したわけではない。路地裏で広くなった部分に突き当たったのだ。もう女の子に逃げ場はない。

「あなた……追い込んだと思ってるでしょ」

追い詰められた女の子は口を開いた。しかし表情はそんな表情をしていない。

「逃げ場はないだろ。追い詰めたんじゃなかったら、いったいなんだっていうんだ?」

「誘われた……とか」

「は?」

と夏喜が口に出した時には、すでに状況は変化していた。
状況に変化が現れたのは箱のように周囲を囲う壁からだった。波打つように壁が振動する。次第にその振動は大きくなり、生きているかのように動き始めた。

「な、なんだ……?」

夏喜は目をひそめる。ひそめて、首だけを動かして周囲の状況を確認する。
しかし、それをさせてもらえなかった。
ゴンッ!と何かが夏喜の顎を直撃する。その体は大きくのけぞり、路地裏の冷たい地面に叩きつけられた。

「が……ぁ」

視界が大きくブレた。一瞬目の前が真っ暗になり視力を失った。三秒程たって視力が正常に戻った時には、時すでに遅し。

「っ!?」

体の上には刃物や鈍器など、さまざまな金属ででき不器のような物が浮いていた。ナイフのようなものがあれば、日本刀のような刃物もある。トンカチのような鈍器もあれば、二メートルを超えるようなハンマーもある。
その数はざっと見積もって100程。浮いている金属は全て人間の命を奪うには事足りる物だ。
その全てが体に落下したら、と考えるとぞっとする。しかし、それが現実となろうとしていた。

(これはヤバい!)

と夏喜は体を動かそうとするが、金属不器は待ってくれなかった。
金属不器は容赦なく自由落下を始めた。



上条瑞樹も路地裏を走っていた。少女からは、五分ほど歩いた所だという事を聞いていたが、しばらく走っても何も見当たらない。
大きな道路であれば、五分ほどといえばあっという間の距離かもしれないが、路地裏となると話は変わってくる。
そういうのも、路地裏とは迷路のように入り組んでいるため、方向を全く間違えてしまえばそれまでで、目的地には到底届かない。

「くそっ!迷ったあぁ!」

瑞樹はその場で悔しそうに地団駄を踏む。
ちくしょうっ!と諦めかけた。
だが、
その時、

瑞樹が立っている路地裏のさらに向こう側、何かが横切ったような気がした。
おそらく、その場は十字路のようになっていたのだろう。
一瞬しか見えなかったため、何がなんだか目で捉えきれなかったが、確かなのは二人の人間が横切ったという事だった。
瑞樹の思考に少しひっかかった。その二人はなんだか追われ、追っているような感じだった。

瑞樹もそれを追いかける事にする。
そして、その二人に追いついた時、彼の目に飛び込んで来たのは、1人の少年が無数の金属武器と1人の女の子に襲われようとしている光景だった。

[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!