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とある短編の共同作業
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その手は、全てを闇に飲み込むような黒い色をしていた。
掌の広さは二メートル程。その巨大な掌が瑞樹と女の子を握り潰そうとしている。

「な、なんだぁ!?」

瑞樹は反射的に手拳銃を作り、高水圧の水の弾丸を巨大な手へと撃ち込む。
ゴバッ、と弾けるような音がして、巨大な腕には大きな風穴が空く。

「どうだよ」

しかし、その風穴に、『何か』が集まってゆく。その『何か』は渦を巻くようにして、腕の風穴を覆うようにして、風穴を埋めてしまう。

「な……」

瑞樹の表情は驚きに染まる。

「な?」

その時、巨大な腕は瑞樹の体を握った。ギリギリッと捻るように、体に力が加わってゆく。

「お……あが……」

ミチミチッと体から嫌な音がする。
しかし、

「……俺を……なめんなあああぁ!」

ブワッ!、と巨大な腕は跡形もなく弾け飛んだ。
空気中にあるありったけの水分子を集め、瑞樹は巨大な津波を作り上げた。その津波は巨大な腕だけを捉え、高水圧で圧し潰した。
巨大な腕の形は失われた。そこにもう腕はない。

「どうだよ……ははっ」

瑞樹は肩で息をしながら、その腕の残骸を見下ろす。

(……いったいなんだったんだ、コレは)

瑞樹は目をひそめた。
あまりにあっけな過ぎた。あれだけ強い力を持っていた巨大な腕が、いくら瑞樹の津波の破壊力が大きいからと言って、こんなに簡単に潰れてしまうなんて、どこかおかしい。

(なにか……あるな)

直感的にそう思った瑞樹は、驚いた顔をしている女の子を見る。

「あれは、あの巨大な腕は、どこから来たんだ?」

「……ここから、路地裏を五分程歩いたところです。詳しい位置はわかりません」

「そうか……わかった。ありがとう」

瑞樹は路地裏に一歩踏み出した。

「な、なにをするつもりですか?危ないですよ!」

「大丈夫大丈夫」

瑞樹は女の子に笑いながら手を振った。そして、路地裏の深みに入ってゆく。

「……なんだかわかんないけど……あんな女の子を襲うなんて許せねぇ……正体を突き止めてやる」



芳野夏喜と高宮隆治は路地裏に座っていた。そこには大きな青いゴミ箱が三つ置いあって、二人はその影に身を潜めるようにしていた。
そこに誰かがいて、その光景を見たら顔を引きつらせてしまうだろう。
ゴミ箱の影に隠れてヒソヒソ話、うん、なんとも怪しい。
しかし、そんな事を気にしている暇はなかった。

「あいつらがそうか?」

「ヒヒッ、あぁ、たぶん間違いねえな」

夏喜は顔をほんの少しだけ動かして、ゴミ箱の影から顔をだす。そこには、三人の少年が退屈そうに立っていた。
宗教団体というから、てっきり『オタク』的な少年達の集まりかと思っていたが、三人の中には、タバコを口にくわえながら話している金髪の少年もいた。
他二人の少年も、夏喜が想像していた感じの少年とは異なっていた。案外こんなもんなのかな、と夏喜は適当に納得する。

「ハハッ、まぁメンバーがあれだけっつーことはねぇと思うがな」

「『マグネット』ってどのくらいメンバーがいるんだ?」

「キヒッ、30人を超える人数らしい。そいつらを纏めているボスらしきヤツがいるらしいが、今んとこ、そいつを俺は知らねぇ」

「30人って一クラス近いじゃんか……それを纏めるボス……ねぇ」

夏喜は再びゴミ箱の影から顔を出して、三人の状態を確認する。
だが、そこにいたのは三人だけではなかった。その人数は10人を超えている。

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