とある短編の共同作業
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とある路地裏。そこは僅かな広場のようになっていた。ちょうど建物がへこむような壁の作りをしていたため、そのような広場が出来上がったのだろう。
まるで巨大な箱の中にでも迷い込んでしまったような感覚に陥る。
所々に亀裂が走ったその壁には、エアコンの通気用のファンが無数についていて、その音が不気味な雰囲気を演出していた。
その中で、立っているのは一人の少年。それと、得体の知れない『化け物』だった。
人間などでもケタを外れた人間は『化け物』という表現をするが、少年の目の前に立つ『それ』は正真正銘の『化け物』だった。
少年はそれを見上げる。高さにして3メートル以上のそれは、人間のような形をしているが、確実に人間ではない。
まず大きさが違うし、色も全体が黒っぽく、背中からは羽のようなものが生えているように見えた。イメージとするなら、キリスト教関係の絵画に描かれている『天使』のようだった。
その天使は表情もなく、目に光りもない。
その天使から、冷徹な不気味な声が発せられる。
「貴様の罪、その身で償え……」
「っ……なんだってんだよ!!俺が何をしたって…な」
突如、天使の腕に巨大な大剣が現れた。何かが集まってできたようだが、それがなんなのか、少年にはわからない。
天使はその大剣を強引に振り下ろす。
「う……うわあぁ!」
ガンッ!という音がしてアスファルトの地面が砕けた。
一瞬天使の動作は止まったが、その標準はすぐに少年へと向く。
「ちっくしょおおおおお!!」
少年はなにか衝撃波のようなものを体から発したが、天使には通用しなかった。衝撃波は大剣で軽々と薙ぎ払われてしまった。
「貴様の罪、その身で償え……」
それと同時に少年に沸き上がってくるのは恐怖。
絶対に勝てない相手にどうにもしようがないという絶望が少年を包み込んでゆく。
「罪ってなんだよ!!俺が一体何をしたっていうんだ!!」
「貴様の罪、その身で償え……」
天使は答えない。同じ言葉を繰り返す。
そして、
その直後。
「ご?」
ミチッという感覚が少年の腹部を襲い、彼の意識は途切れた。
○
「おいっ高宮、こんな所になんの用があるんだよ!?」
「静かにしろ……いま話してやるからよ」
芳野夏喜と高宮隆治は路地裏にいた。そこは非常にせまく、所々にクモの巣が張り巡らされていた。
持ち帰ってきたハンバーガーを食べようかと思ったがが、そんな気は一気に失せる雰囲気だった。
「キヒッ、よく聞けよ?」
「……わかったよ」
「ヒヒッ、芳野テメェ、『マグネット』って知ってるか?」
「磁石?」
「ハッ、違ぇよ。マグネットっていう組織だ」
「組織?なら知らないな」
夏喜は目をひそめた。高宮はその反応を見て、やはりな、という顔をした。
「フンッ、マグネットっつーのは、学生の宗教オタク共が集まった宗教グループみてぇなもんだ。専門はキリスト教らしい」
「宗教グループ?それがどうかしたのか?」
「あぁ、最初は聖書を読み上げる程度だったんだが、どうも最近おかしいらしい」
「と、いうと?」
「ハンッ、ヤツラの集会の場所で『天使を見た』っていうウワサがあるみてぇだ……実際問題、ヤツラの集会場所でいろんな物が壊れているしな」
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