とある短編の共同作業
V
○
結局、全てが夏喜の奢りとなってしまった。
故に、夏喜はうなだれている。
彼は机に顔を押し当てて、まるで世界が終ったとでもいうような顔をしていた。
にもかかわらず、穂邑の表情は相変わらずラブ&ピースそのものだった。
満面の笑みを浮かべて、彼女は二つ目のハンバーガーに突入していた。
「ちくしょ〜やっぱりどーしよ〜もね〜」
「ははっ……しょうがないわね……穂邑はこういうやつなのよ」
「う〜ん。そうなんだけど……なんか間違ってるような気が」
「別に間違ってる事なんかないし!」
「はいはい、そうですか。ほんっと変わらないわね。中学時代から」
完全に穂邑ペースで事態は進行していた。
苦笑いしていた美琴も、なんだかんだで自分の注文した物を全て食べ終えている。
まんざらでもないというような表情。
「ちくしょーまぁ、諦めよう……こうなったら仕方ない。穂邑にはかなわないや」
遂に穂邑に屈した夏喜は、しぶしぶ自分の注文したハンバーガーに手を伸ばそうとした。
その時だった。
「キヒッ、珍しいじゃねぇか。お前が間違いに屈するんてよ」
聞き覚えのある少年の声がして、夏喜は振り返る。
その少年は、明らかに染めていると解るような茶髪に、目に少しだけかかる程の長さの髪の少年だった。
「高宮……」
それは学園都市『寸止め』の第一位、高宮隆治(たかみやりゅうじ)だった。
「キヒッ、久しぶりだな」
「やっぱり間違ってると思うか。お前からもコイツになんか言ってくれないか?」
高宮は穂邑に目を向ける。
彼女はキョトンッとした表情で高宮を見ていた。
高宮はう〜ん、と腕組みして、
「キヒッ、まぁまた今度な。それよりもテメェには来て貰いてぇんだ。ちょっといいか」
自分の話題に持っていった。
「えっ……お前まで!?」
「クフフッ、すまねぇな」
高宮はそう言うと夏喜の肩を強引に掴み、無理矢理席から立たせる。
「ちょ……お前、何を?」
「来て貰いてぇって言ったろ?」
「いや、いきなり言われても」
「いいから来いって!!結構切迫つまってんだよ」
高宮は夏喜の肩を更に力を込めて掴む。
「いたいいたい。イテェって!わかった。行くよ!だからハンバーガー持ち帰らせてくれ」
「キヒッ、交渉成立だ」
夏喜はまだ手をつけていないハンバーガーとポテトを、急いで一つの紙袋にまとめあげた。
「終ったよ」
「キヒッ、じゃあ来て貰おうか」
「はいよ。あ、穂邑、御坂、またな」
「え……あ…うん」
夏喜と高宮は、キョトンとする二人の表情をよそに、ファーストフード店から慌ただしく出ていった。
穂邑と美琴はしばらく呆然としていた。
「ねぇ、穂邑、あれ高宮隆治よね?寸止め一位の」
「……うん…間違いないし」
「アイツ、なんで高宮と知り合いなのよ?」
「…………さあ?」
○
瑞樹はその様子をファーストフード店の入り口付近で眺めていた。
先ほど瑞樹が肩をぶつけた少年が、美琴と穂邑と同席していた『けしからん少年』と話していた。
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