とある短編の共同作業
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○
「キヒヒッ、テメェらのくだらねぇ遊びはここで終わりになるぜぇ?」
目の前には30人余りのマグネットのメンバー。
それに対するのは高宮隆治。
30対1。常識的に考えれば圧倒的に不利な数だ。
どんなケンカも数にはかなわない。
数十人を相手にして、圧倒的勝利を得られるとすれば、それはテレビの中やマンガの中のヒーローにしかあり得ない。
にも関わらず高宮は余裕の表情を浮かべている。
「ヒヒッ、軽くひねり潰してやるからかかって来いよ」
「……っ……くそ」
マグネットの一人の少年が小さく舌打ちした。そして、仲間に話しかける。
「アレをやるぜ」
「アレっすか」
「了解」
一人の合図でマグネットの何かが変わった。
先ほどまでザワついていたメンバー達が急に静かになり、何か集中し始めているようだ。
(……なんだ?)
高宮は目を潜めた。
「おい、お前」
不意に、マグネットの少年が高宮へ話しかけた。
「俺たちの事をくだらねぇ遊びとかぬかしやがったな?ならそのくだらねぇ遊びに付き合って貰おうか」
「あ?……ヒヒッそりゃゴメンだ。遊びはすぐにやめて貰う」
「……そうかよ」
マグネットの少年は苛立つように呟いた。
そして、その少年を取り巻くように黒い『何か』が沸き上がる。
パッと見たところ、どす黒いオーラのようだ。
そして、その黒い『何か』はマグネットのメンバー全員にまとわりついている。
(いや、発せられてんのか……)
高宮はその『何か』の先端部へ目を向ける。
一人一人別々に『それ』を放出しているようだが、その先端部は絡み合うようにして一つに纏まっていた。次第に『それ』は形を作り始める。
どす黒い邪悪なイメージの『何か』から作られるのは、巨大な二つの羽を背中から生やし、全てを切り裂く大剣を手に持つ生き物。
その生き物に表情はなく、ただ敵と認識した者を抹殺するため、高宮へ向けて剣を振り上げていた。
「……これが噂の天使?」
そんなどす黒い生き物の全貌を見て、高宮は面倒くさそうにワシャワシャと髪をかき分ける。
そんな高宮にどす黒い生き物は容赦なく大剣を振り下ろす。
ベキャッ!と何かがひしゃげるような音が路地裏に響いた。人間の身体から発せられるような音ではない。なにか交通事故でも起こったかのような音。爆発音に近い。
「あ?」
大剣は高宮の頭を捉えていた。しかし、それほどの音が鳴り響いたにも関わらず彼の身体に変わったところはない。
強いてあげるとするならば、苛立ったような表情をしているという事だろうか。
「……バカな……天使の一撃を完璧にくらったのに……立っているだと!?」
高宮に当たった大剣は、まるで渦を巻くかのようにぐしゃぐしゃにひしゃげていた。もう剣の役割は到底果たせそうにない。
高宮は、少年が呼ぶ『天使』が剣を振る横方向の回転の力を、縦方向の回転の力に変換し、大剣へ伝達させた。
結果、大剣はこのようにひしゃげてしまった。
「ハッッ、天使の一撃?これが?笑わせんじゃねぇぞくそったれどもがぁ!」
高宮はニヤリッと裂けるような笑みを浮かべる。
それを見てぞっとしたのか、マグネットのメンバー全員がビクリッと肩を震わせて後退りをする。もしかすると、その中の数人は逃げ出していたかもしれない。
「ヒャハハッ、天使ってのはなぁ、こんな路地裏に収まるようなパワーじゃねぇ。おかしいと思ってたんだ、テメェらなんかに天使が召喚できるなんてよぉ」
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