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〜龍と刀×守護の鬼〜
『交差』
*****


「私たちが守護棟を案内させて頂きます、西宮 沙奈(ニシミヤ サナ)と氷柱 聖です。では、早速始めましょう」

手早く自己紹介を済ませ、クラスを二つに分ける沙奈。氷柱は何やらぶつぶつと呟いている。

クラスの方はというと、男女ともに歓声を上げていた。
何故かと言えば……。
男子の理由。
沙奈が綺麗だから、好みのタイプだからだとかそんなモノ。
女子の理由もまた、似たようなモノだ。
氷柱が格好いい、の一言に尽きる。
本人たちはまったく気付いていないらしいが、クラスは色々と騒いでいた。

「えっと、ここが守護士の……」

陽はたまたま氷柱の班になった。
その頬を見てから、反対を進んでいる沙奈に目を向ける。そして納得したように、こう思った。

「(なるほど……この人も大変だな。案外、仲良くなれるかも)」

朝の自分の境遇と照らし合わせた。
多分、同じ気持ちを味わった者だから分かるのかもしれない。理由も分からず頬を殴られる痛みが。


*****


夕焼け空が次第に黒く染まっていく。夜になるという自然の生業ではなく、不自然にポツ、ポツ、と一つの黒点が二つ、三つと増えていくのだ。

「ママー、あれなーに?」

幼い女の子が気付いたのが始まりだ。
この子が言わなければ、異変に気付く事はもっと遅れていたかもしれない。
道行く人が足を止め、空を見上げる。そして、誰かが言った。

「隠れた方が良いんじゃないか?」

たった一言。人々は近くの建物へ非難しようと、もみくちゃになり、自分の身をだけを守ろうとなりふり構わず走る。
聞こえる悲鳴や罵声。

その数分後、空は完全に闇に包まれた。時折覗く日差しが、妙に不気味に感じられる。


*****


守護棟の案内も終盤に差し掛かかった頃、陽たち学生は大きな一室に集められていた。
軍事目的で使われているようなレーダー装置など、普通に生活しているだけではほとんど関わる事の無い機械が沢山ある。説明は受けたが、理解するまでには至らない。それでも、町長の無駄話よりは楽しい内容だ。

「魔力?……近いな」

ボソッと呟いたその瞬間。守護棟が大きく揺れる。
ただの地震だと思ったそれは、とても長く続いた。時間にして約三分。
時間が経つに連れて、生徒たちの不安も大きくなる。

「ちょっと俺見てくる!沙奈はこっち頼む!」

この場を沙奈に任せた氷柱。

「これは行かないとマズいかな」

騒ぎに乗じて陽は部屋を抜け出す。
当然、状況を確認するためだ。

ポケットから一枚の紙を取り出し、ぎゅっと握る。展開される円や記号、魔法陣だ。
そこから現れたのは黒と金の装飾をされた、柄。右手で掴み、一息で引き抜く。
姿を見せる銀色の刃、白銀の召喚。

「さてどうしようか」

「ここは室内か?ならば外に出るのが先であろう」

あまり緊張感の感じられない陽と、召喚されたばかりなのに、いつも通り冷静な判断を行う白銀。

「とは言ってもな。出口が分かんないだよ……」

「……仕方あるまい。窓を破って行くしかなかろうな。緊急時だ、その位許されるだろう」

人が通れそうな窓を探す。

「良しっ!こっから飛び降りるぞ、白銀!」

「うむ。我はあまり関係無いが……骨折などとふざけた事をやらかすなよ?」

助走を付けて窓に体当たりし、ためらいもなく飛び降りる。陽だから出来るのであり、普通なら安全性を考慮して、せめて高く無い場所の壁を壊して行く。

着地した陽の前に待ち受けていたのは、見たことの無い光景だった。

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