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〜龍と刀×守護の鬼〜
『奇遇な遭遇T』
*****


昨夜あれだけの戦闘が行われていたと言うのに、町の人たちはとても平然としていた。そういう事に慣れているのか、知っていて当たり前の事なのか。とにかく、陽や魔術協会側からしてみれば有り得ない事なのである。

「さて、そんな事より……」

周りを見渡してみるが、当然、知らない場所だ。

「はぐれた……?ははっ、まさかな。俺がじゃなくて、あいつらがはぐれたんだ。井上が居るんだから絶対そうだ。俺は悪くない」

あくまで自分を正当化。
目的地は一緒なのだから、遅かれ早かれ出会うはず。

「あれ?陽ちゃん?」

「ん……お前、はぐれたのか」

正確にはお前も、と言うべきなのだろうがあえて伏せておく。

「うーん、ちゃんと付いて来たはずなんだけどなー」

何でだろう?と首を傾げる月華に、

「どうせ何か変な物でも見つけて、ずっと買うか買わないか考えてたんだろ……」

呆れ顔で考えられる原因を口にしてみる。

「何でわかったの……?でも、変じゃないよ、可愛いんだよ!あのウサギさん!特にあのクリクリした瞳が−−」

どうやら正解みたいだ。月華の趣味はたまに分からなくなる、と呟いてから続ける。

「図星か。まあ良いや……俺はあの守護棟ってとこに行く予定なんだけど、どうする?」

「うーん……このまま一人だとつまんないから、陽ちゃんと一緒に行くよ」

そう言って陽の隣に付く月華。それを確認してから守護棟に向かって歩き出した。


*****


「補強材を買って来なさい!」

理不尽にも怒鳴られたのは昨夜の事。戦闘の余波による守護棟の一部の損傷。それを直す材料を買って来るように、と半ば無理矢理行かされた。

「別に辛い訳じゃないけどさ……ったく沙奈のヤツも手伝ってくれりゃ良いのに」

近くのホームセンターで購入した木材−−せしめて数十キロ−−を軽々と担いでいるのは一人の少年。氷柱である。

「お、こんなとこにちょうど良くベンチがあるな。少し休んで行こ……」

さすがに疲労が完全に回復していないのか、ほんの少しだが疲れてしまった。ドサッと重量感がある音を出しながら木材を置き、自身はベンチに腰掛ける。

「はぁ……どうせ寝てるんだろうな沙奈は。起こせばどうなるかわからないし……」

そんな独り言をブツブツと呟いていたら、気が付けば周りから人が離れている。そんなに危ない人に見えてしまっただろうか。

「うぅ……視線が痛いよ」

子供まで避け始めた。これは精神的にダメージがある。

「そろそろ離脱しなきゃな……ん、あれは……?」

逃げるために、勢い良く立ち上がった視線の先。どこかで会った事があるような顔が通り過ぎて行く。

「龍神かな?おーい!」

自分の声に反応してくれたのは、昨夜肩を並べて戦った少年だった。

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