〜龍と刀×守護の鬼〜
『手違いにより……』
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戦いが終わった翌日の朝。
今日は黒川町から帰る日だ。夜中に寝ないで遊んでいた連中は、目が死んでいる。
「あー、とても言いづらい事を言わなきゃならないんだが……とりあえず聞いてくれ」
担任が珍しく弱気に発言しているのを見て、井上は当然質問を繰り出す。
「先生ー。何かあったんですかー?」
「井上……それを今から話すんだよ。お前はまず人の話を聞く事を覚えろ」
周りから笑われてもまったく動じないのはさすがと言うべきか。
「学校側の不手際で今日もここに泊まってもらう事になってしまった……それでだ。詫びも兼ねて一日中自由時間にしよう、と−−静にしろ!」
騒ぎ出した生徒たちを怒鳴りつける。
まさかそんな事になっているとは思うはずもない生徒たちは、今後の予定を話し合っていた。
「この後どうする?」
「自由なんだろ?俺は寝る」
陽の頭の中にはそれしかなかったのだ。何故なら、昨夜の戦闘でかなりの体力を使ってしまった上に、明け方まで協会の手伝い−−町の修復や怪我人の治療など−−を無理矢理やらされていた。だから、帰りのバスで睡眠を取る予定を立てていたら、このような事になっているではないか。
「ああ龍神には悪いが、ここは使えないぞ?予定では一泊だけだったんだからな。改めて予約入れ直して部屋を確保しなければならないんだ」
「……マジかよ」
更に担任の駄目押し。陽は誰にでも分かるくらいに肩を落とす。
「とまあそういう訳だから、午後七時にはここに集合する事。解散!」
言うなり宿に戻る担任。学校側と連絡しあうのだろう。部屋や食事など、想定していなかった出来事に対応するために。
「龍神、どっか遊びに−−」
「無理」
「いきなり自由時間とか言われてもね?どうする?」
井上の言葉を受け流しながら、中島と話していると、結局いつものメンバーで行動することになった。
「なあ、あそこ行ってみねえ?」
井上が指差した場所は、守護棟だ。理由はこう。
「なんかさ、登ってみたくない?」
「そうは思わないけど……昨日はざっと見ただけだし。井上にしては良いアイディアじゃないかな」
「一度でもお前と同じ考えを持ってしまった俺が悲しいぞ……」
陽と中島がそれぞれの形で賛成。予定が決まった三人は、守護棟を目指して歩く。この時井上だけは、本気で登ろうとしていたのだった。
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