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〜龍と刀×守護の鬼〜
『終戦』
空を飛んでいた、男に作られてしまった者たちも姿がなくなり消えていた。
あるのは満天の星空だけだ。

「この男ってどうするんだ?」

「多分、上の方が聴取とか色々するんだと思うから、とりあえず捕まえとくよ」

倒れたまま動く気配の無い男。死んでいるんじゃないかと思うくらい動かない。

「そっか。でもさ、白銀。魔族に取り憑かれた人間って記憶とか残ってたか?」

「大概は残っていないのが常だが……見たところ科学者。科学者ならば自身の研究した物の記録はあるのではないかと我は思うぞ」

魔族憑きの人間は、取り憑かれた時の前後の記憶が無いのが常である。殺人犯が罪を犯した時というのも、これが関わっている事がごく稀にあり、見分けるのが非常に困難。
協会の人間でも、魔族憑き絡みの事件は扱いたくない傾向がある。

「それと。町、こんなにしちゃって良かったのか?何気なく魔術ぶっ放してたんだが……もしかして修理費とか取るのか?」

金の問題になると、何故か慎重になってしまう陽。
割れたガラスにコンクリートの壁、家の屋根の一部などなど。とてつもない金額になりそうだ。

「いや、こっちとしては助けて貰った側だしね。俺がなんとか言っとくよ」

ほっとした様子で胸を撫で下ろす。さすがに、この金額を払えなどと言われたら陽でなくても借金をしなければならない。

「それにしてもお互いボロボロだよな」

氷柱が言ったこの言葉に陽は顔をしかめる。

「この格好で戻るのは気が引けるというか色々とマズいというか。白銀も隠さなきゃいけないし……」

氷柱は守護棟に戻れば替えの服があるだろうが、陽は制服を一着しか持ってきていないため、こんな状態で戻れば月華に何を言われるか分かったもんじゃない。
そして何より白銀。召喚は出来ても戻す事が出来ない。

「制服なら、こっちで注文しよっか?お礼と言っちゃ少なすぎるけどさ」

「助かるけど……そんな早く来るもんじゃないだろ?(だけど今月協会の仕事入ってないし、金無いからなあ。買い溜めしときゃ良かったな……、一着残ってた気が)」

陽が頭を抱えて唸っている。選べる選択肢は三つ。このまま戻る、氷柱に頼む、いっそ戻らない。
最初と最後は断然却下、残るのは頼むしか無いのだが。

「どうしようか……頼みたいのはやまやまだが時間かかるし」

「ん、無理言ってでも持ってきてもらうよ。上の方が頼めば三十分もしない内に来ると思うし……その前にもう一仕事、かな」

身構える氷柱の先。地面に白い魔法陣が展開されている。

「こいつは意識無いし、仲間か!?」

新たな気配を察知した氷柱。右手はキーホルダーへと置かれ、いつでも戦闘出来る状態だ。
対する陽はというと。

「あれ?あの術式……協会の?」

「転移の魔術。協会が保有する能力者だな」

術式というのは、人それぞれ形が違うのだが、協会に所属している能力者は全員同型の術式を使用する。
魔法陣から現れる白装束の着物を身に纏った二人の男。

「『剣凰流』頭首殿でいらっしゃいますね?」

「ああ。代理だがな。で?これは?」

「敵、じゃないのか」

陽が普通に会話をしているのを見てようやくキーホルダーから手を放す。

「簡単に説明させて頂きます。今から一般人への記憶操作を行います。破壊された町の修復も我らが引き受けますので頭首殿はお休み下され」

「記憶操作?」

「魔術による記憶の書き換えだ。後遺症も残らぬ」

「気は乗らないがな。うまく、やってくれ。ん?転移の魔術……あ、良い事思い付いた」

手をポンと叩き、男に一つ尋ねてみる。思い付いた、良い事とやらを実行出来るか。

「なあ、転移の魔術ってここから俺の家までどれ位の時間だ?」

「は……約十分程かと思われ−−」

「良しっ!今すぐ俺の家まで転移して部屋から制服を取ってきてくれないか!ついでに白銀も置いて来て!」

男の言葉を遮り、無理難題を申し付けた。確かに、利用出来れば、良い事だ。

「……陽、お前は……」

呆れたように溜め息を吐く白銀。氷柱も苦笑いだ。

「か、構いませんが……では、少々お待ち下さい」

「おう!頼むぞ!」

男に白銀を押し付け、自分は魔法陣から離れる。笑って手を振りながら。

−−二十分後。
持ってきて貰った制服をその場で着替え、軽く腕を回す。

「ふう……問題解決」

「それは良かった。じゃあ、戻ろっか。龍神!」

「行くぜ、氷柱!遅れるなよ!」

二人は走り出した。
戦いの中で芽生えた友情を胸に抱えて。

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あきゅろす。
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