〜龍と刀〜
騎士の心V
「良くまだ喋る事が出来ますね……その力はどこから湧いているのです」
言いながら突進して来たアスラ。翼を横に真っ直ぐ広げ、サーベルを前方に突き出した形だ。その姿は獲物を狩る猛禽のようで。
「さあな。俺にも分からねえよ!」
タイミングを見計らい、避ける。横では無く、上へ。アスラの体を飛び越えるためだ。
「こっちなら、さすがに……」
速度を緩めずに突き進むアスラの背中を蹴って見送り、着地を試みる。
「さすがに、何ですか?」
「くっそ……!死角は無いのか!」
右足の爪先が地面に着いたのを見計らって放たれたのは、一枚の羽根だ。
柔軟に羽ばたかせていたはずなのに、喰らってみると案外痛い。完全に刺さったという訳ではないが、足首の辺りを擦ってしまった。生暖かい液体がじわじわと湧いては流れているのが伝わってくる。
何度味わっても嫌な感覚である事には変わりはない。
「腱を狙ったんですがね……外してしまったようです」
方向を変え、再び陽に突進を仕掛ける。
次はただサーベルを構えるだけではなく、陽が逃げれないように複数の魔法陣を展開しながらだ。
「あれは多分砲撃の術式だ。下手に動けば木っ端微塵になるぞ」
「それは良いから避ける方法を教えてくれよ……」
そうこうしている内にも弾丸となったアスラは迫る。複数の赤く輝く魔法陣を従えて。
「“撃ち抜け、闇の爆撃”」
たった一言、魔術を発動させるためのキーを。途端に、魔法陣に描かれた不可解な文字やら記号やらに更なる輝きが生まれる。
それが膨張、瞬く間に爆発した。
「うおっ!突進は止めたのか!?」
「戦いの基本は状況に合わせてスタイルを変える事。そのため私は様々な戦闘方式を取り入れております」
そんなアスラの説明口調は放った魔術の爆音によって掻き消される。
縦横無尽に駆け回る破壊の弾丸を、陽は見切れる分は避け、あるいは相殺する。
だが、数が数だ。ほとんどが容赦なく体を殴る。
「っ!」
「どうした?」
「マズい、骨、やっちまったかも……」
地面から反射してやって来た弾丸を捌ききれず、脇腹を強打。貫通こそしていないが、かなりのダメージだ。
「本数は?」
「一本か二本……こいつは、一旦下がって形勢を立て直さないと」
「うむ。それが最善だな。我の硬化をほんの少し貸す故、さっさと下がれ」
白銀の魔力が体を通っていくのが分かる。筋肉が増えたかのような、そんな感覚。
「まさか私がみすみす逃がすとは思っていないでしょう?」
全力で弾幕から逃れる陽に追い討ちを掛けるように、アスラ。
「どけよ!」
脇腹に掛かる負担を無視して、練り上げた水気を居合いとともに打つ。
あくまでも時間稼ぎのための攻撃だ。
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