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〜龍と刀〜
後夜祭!\
「もう、終わったんでしょうか……?」

司会がそう言ったのを皮切りに、観客席がざわつきを取り戻す。心配そうにこちらを見ている月華も居るが、陽は気にしていないみたいだ。

「よし。井上、動いても良いぞ」

「え、今……何かやったのか?」

確たる手応えに満足げな笑顔を浮かべて竹刀を下ろす。
しかし対する井上は不思議そうに陽と自分の体を見比べていた。見る限りでは特に異変は無い。気付いていないだけで実は薄皮一枚切られたんじゃないだろうかと、顔にペタペタと触れている。

「異常無し、だな……龍神?」

「じゃあ、観客席の方を向いてジャンプだ」

「ジャンプだな?よっ、と」

クルリと半回転し、観客席と向かい合う。
未だに井上への警戒態勢は解かれていないみたいだ。
井上は先程と同じように飛び跳ねる、ここからが陽の狙い。跳ねる度にバラ、バラと数回音がした。
そして、

「キャーー!」

「うわ……な、何だ!?」

「く……今度は露出騒ぎを起こすつもりですか!皆さん、捕らえてください!容赦なしに!」

一層騒がしくなった観客席に戸惑いを隠せない井上はあたふたと周りを見渡すが、救いの手は一切無し。
自分の状況を確認するために、シャツへ目を落とすと、まずはワイシャツのボタンが全て無くなっており、更にはその中に着ていた服が真っ二つに裂かれているではないか。

「龍神!!おい、待てよ!逃げないで、助けようよ!」

「ああ、俺の役目は……終わったから」

「そんな笑顔で悲しそうな台詞!?救済金払うからぁ!」

「仕方ないな。どうしてもと言うならその条件で助けてやるぞ?本当に仕方なくだからな」

迫って来た、再臨・筋肉の塊の前に立ちふさがり、いつの間にか奪っていたマイクで大きく一声。

「ストップだ!今回の出来事は俺の責任だ……俺の出場を無効にして、今のは無かった事にしてくれないか?」

意表を突かれたのは司会だけでなく、警備要員、そして何より暴徒となりかけた観客だ。

「龍神、お前……」

「道具に対して整備を怠ったのなら、こちら側の責任。なら、責任を取る必要があるのは俺だ。そうだろう?」

訴えかけるように語る陽。そこまで金に執着している陽は今までに無い。異変に気付いていたのは、井上を除くごく一部。

「そこまでして、道具を守り抜きたいのですか……?龍神君は……?」

「ええ。道具に罪はありませんから。あるとしたら、使った人間ですよ」

周囲の騒がしさも消え、皆が陽の言葉に聞き入っていた。井上も、道具呼ばわりされているのにも関わらず事の様子を眺めている。

「そこまで言うなら……あなたの言う通りにしましょう。それで万事解決となりますね」

司会の名残惜しそうな声で陽の出場は無効となり、井上も救出された。
そして、ステージから去っていく。

「龍神……ありが−−」

「礼ならいらない。何て言ったって、今のお前の地位は学校最低にまで成り下がっただろうから」

笑顔で、残酷な事実を突き付けた。
陽の狙いはこうだ。自身の評価を上げる事で、それに助けられた井上の評価を底辺まで落とす。ただのイジメだった。

「うわぁあ!お前何やってくれてんだよぉぉ!!」

井上の叫びは虚しく夜空に吸い込まれていくだけ。

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あきゅろす。
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