〜龍と刀〜
術式空間T
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光に包まれてほんの数秒。目の前に広がったのは、とある場所だ。二人も良く知っている場所。
「ここは……学校、なのか?」
そう。
今二人が居るのは夜の学校の屋上だ。どこがアトラクションなのだろう。
「あ、見てください。扉のとこに何かが……」
走り寄り、扉に貼り付けられた一枚の紙を読み上げる春空。
「『男性の方はこの中にあるアトラクションアイテムを持って行ってね』……ハートマーク付きで書かれています」
「妙にピンポイントな指令だな……ま、従っておくか」
用意周到に置かれている数々のアイテムを品定め、もとい確認。
模造剣、金属バット、ゴルフクラブ(パター)、鉄パイプ、モップ、水鉄砲に割り箸で作ったゴム鉄砲。後半になるに連れて威力が下がっているのは確かだ。
「……本気で危ないのかどうか分からないな、コレは。仕方ない、実用的なのは剣とバットかな」
陽は先に模造剣を手に取り、次にバットへと手を伸ばした。すると、他のアイテムは、そこには何も無かったかのように掻き消え、残されたのは小さな木箱。
「所持数制限ありってか?……うぉ、軽過ぎだろ、この剣」
全く重みを感じない模造剣を振り回し、感触を確かめる陽。
「凄い凝ってるアトラクションですね。これは楽しそう……」
起きている現状について何も聞かれないのは助かるのだが、こうも目を輝かせられると巻き込んでしまったのに悪い気はしない。
木箱を開けると、案の定、紙が詰め込まれていた。
内容はこうだ。
『あなたは姫を助け出した勇者。今まさに魔王の居城を−−』
「何でアフターストーリーなんだよ。モンスターでも出現するのか」
ペラリと捲り、二枚目。
『ゴール目指して頑張ろう!裏・地図』
「学校で迷うかよっ」
「あの、落ち着いて……」
地図によると、スタートはこの屋上でゴールは玄関。夜の学校、と言う事は肝試しの延長と考えても良いだろう。道は分かるから迷う訳が無い。
赤丸が付いている所は、必ず行けという意味なのだろうか。
「んー最短ルートなら階段降りて、玄関に直行か。それを考えての青丸か……面倒だ」
「……それでしたら、赤、青と順になるように進むと良いんじゃないですか?」
地図を指でなぞり、陽へ説明する春空。それを大人しく聞く陽は、本気で感心しているみたいだ。
「結果的にこのルートを順番に通ると……赤と青を全て回る事が出来るんじゃないかと」
「おお……!確かになぁ。なるほどそういうのもあるのか……」
持っていた地図は春空に預ける事にした。自分が持っていると絶対に無くすだろうから。
「なら、最初は近場の理科室か……肝試しなら定番中の定番だな」
「やっぱり、動くのが居るんでしょうか……?」
そんな会話をしながら、最初の目的地へと向かう二人。
術式空間、ならぬアトラクション探索の始まりだった。
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