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〜龍と刀〜
宝刀と妖刀V
「クククッ……時間切れだな」

封牙の不敵な笑い声と意味深な発言。それが何を意味するのか、雹にも分からなかった。
迫る高速の斬撃。手持ちは封牙一本のみで、至近距離の攻撃をいなせる訳がない。
その時急に来た、心臓への激痛。生まれる脱力感。途切れ途切れになる意識。そして、完全に意識を無くした。

「防いだ、のか?」

全力で振り下ろした白銀と交差するように突き出された封牙。
しかし、雹は防いではいなかった。眼前に組まれた封牙を支えている肩に、しっかりと白銀は食い込み、流血している。
白銀をはねのけ、何事も無かったかのごとく立ち上がった。長い前髪で隠されているため、どんな表情になっているのか察する事が出来ない。まだ笑っているのか、痛みに顔を歪ませているのか。

「僕……は−−殺、す」

立ち上がった雹はブツブツと独り言のように呟き出す。明らかに様子がおかしい。
そのまま、傷口を気にする様子もなく封牙を振るう。血を撒き散らしながら。

「−−死、与え……る。殺戮、繰……り返」

先程の動きがまったく嘘のように、今の雹の動きは滅茶苦茶すぎる。自身の重心さえも押さえれていない。適当だ。

「何だよ……考えが読めない」

バラバラな動きに翻弄されながらも、確実に傷を与えていた。なのに鈍るどころか、斬られても斬られても一直線に振り続けて来る。

「当然!今はオレの支配下に堕ちたからなぁ……喰らわせてもらった」

封牙の異名の由来となった能力。斬ったモノから魔力を喰らうだけでは無く、扱っている使い手からも喰らう。喰らわれた使い手の末路……残された人格と封牙の力に依る暴走。

「白銀……オレみたいに喰らえよ?お前の本来の力、見せてみろ!」

「断る。我は決めた……使い手に傷を負わせないと」

絶え間なく続く雹の攻撃。ただ振り回しているだけだが、威力が大きい。

「お前だって、起源は同じ魔物だ。しかもオレ達みたいな力のデカいのは、力を維持するために人間を喰らわなければ無かった……お前も喰らったんだよ、人間を」

「だが、お前とは違う!」

「違わないさ。幾千幾万と喰らい力を蓄えた。お前は、喰い散らしたモノの数、名を覚えていると言うのか!?」

散る火花。両刀の意志、信念がぶつかり合う。
ぽつり、と一滴。陽の額に降ったのは、雨。結界と言えども自然現象にまでも干渉する事は出来ないのだ。

「雨か……少しは頭冷えたか?」

当たった雨粒が蒸発し、湯気に変わる。それを見た陽は、白銀の怒りの温度だと思った。

「ぬ……うむ、済まない。少々取り乱していた……解放も終わりそうだが、先に解いておくか?」

「ああ、頼む。雨は水気……、一番やりやすい天気だ!」

一瞬で姿が人の物へ戻り、ぼーっと突っ立っている雹に突進する。

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